AIで業務効率化 外国籍職員への翻訳作業も〈隼人会・埼玉〉
2025年09月23日 福祉新聞編集部
特別養護老人ホームやデイサービスから成る複合型介護施設を埼玉県内で4施設運営する社会福祉法人隼人会(行田市、根岸節子理事長)は昨春から、生成AI(人工知能)の活用を始めた。書類作成や外国籍職員の翻訳などで業務効率の向上に役立てているほか、デイサービスの送迎計画を自動作成する専用システムも導入している。
根岸陵法人本部事業部長が主導して導入した。知名度と汎用性の高さから「チャットGPT」を選択。利用料は年間10万円弱。法人職員約600人のうち、主任以上の職員とケアマネジャーの約50人が使える環境を整えた。AIに指示を出す際のポイントや、個人情報の取り扱いなど留意点をまとめたマニュアルも用意した。
利用は任意で各職員の判断に委ねている。一律で強制すれば現場に混乱をもたらす恐れがあるためだ。50人のうち日常的に使用しているのは10人程度だという。活用領域は稟議りんぎ書や出張命令書など書類の作成や、情報検索など。外国籍職員が増える中、翻訳作業の負担軽減にも大きく貢献している。
同法人ではモンゴルやベトナム、ネパールなど6カ国の56人が働く。法人内研修で使用する資料の翻訳はこれまで、グーグル翻訳で1言語ずつ処理し、言語の数だけ作業を繰り返していた。加えて、翻訳後のレイアウト崩れなどの修正にも時間を取られ、1言語当たりの翻訳対応におよそ15分かかっていた。
チャットGPTと、プログラミング言語「Python(パイソン)」を活用することで、わずか数分で複数言語を一括で翻訳できるようになり、修正もほとんど必要ない状態に仕上がるという。
デイサービスの送迎計画では、AIを活用した送迎支援システム「DRIVEBOSS(ドライブボス)」(パナソニックカーエレクトロニクス)を活用する。初期費用5万円、月額1万5000円。
ホワイトボードに利用者の名前が書かれたマグネットを置く、アナログな作業で送迎計画を立てていたが、このシステムを使えば利用者の住所や車両の台数、時間などから最適な送迎ルートを自動ではじき出してくれる。計画の作成時間はおよそ3分の1程度になり、現場職員からは「とても助かる」と好評だ。
根岸部長は「AIは誤解や曲解もあり完璧な存在ではないが、ミスの修正は容易だ。利用料は掛かるが、負担軽減への投資と考えている。事務管理分野で活用を広げたい。将来的にはケアプラン作成業務や、既存のICT(情報通信技術)機器との連携などにも活用領域を広げていければ」と話した。