生活保護、最高裁判決への対応議論 厚労省専門委が初会合
2025年08月23日 福祉新聞編集部
2013年から3年にわたり生活保護費を引き下げたのは違法だと、最高裁が6月に判決を出したのを受け、厚生労働省は8月13日、社会保障審議会生活保護基準部会最高裁判決への対応に関する専門委員会を立ち上げた。委員長には東京大の岩村正彦名誉教授が就任。今後、判決への対応を議論する。
厚労省が13~15年に生活保護費を引き下げたのは違法だとして、受給者が減額処分の取り消しを訴えた裁判は全国で約30件起こされている。このうち、名古屋と大阪高裁の上告審で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は違法と認める判断を示した。判決を受け、福岡資麿厚労大臣は対応を審議する場を設ける考えを示していた。
会合で厚労省の鹿沼均社会・援護局長は司法の最終的な判断を真しん摯しに受け止めたいと強調。その上で「審議は非常に重要かつ難しい議論になると考えている」と述べ、委員への協力を求めた。
最高裁の判決は、物価変動率だけを直接の指標として「デフレ調整」をしたのは、厚労省の審議会でも議論しておらず、厚労大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱があったと指摘した。一方、低所得世帯との格差を是正する「ゆがみ調整」については適法だと判断した。
国家賠償については、厚労大臣が注意義務を尽くさずに漫然とデフレ調整に係る判断をしたとはいえないとして、認めなかった。
会合で厚労省は委員に対して、最高裁判決の法的効果を踏まえた対応や、当時の基準改定で確認すべき論点について意見を尋ねた。同時に、必要な資料についても聞いた。
会議後に取材に応じた厚労省の担当者は、今後検討会で原告らの意見を聞く機会を設ける意向を明らかにした。一方、検討会の取りまとめの時期は未定だと説明している。
原告ら専門委設置に抗議
厚生労働省が最高裁判決への対応に関する専門委員会を立ち上げ、初会合が開かれた13日、厚労省のある中央合同庁舎5号館(東京都千代田区)の前で訴えを起こした原告や支援者らが「厚労省は最高裁での敗訴という現実に向き合うべき」などと抗議の声を上げた。
2013年から行った生活保護基準の引き下げについて最高裁が違法だと判決を出したのを受け、原告や支援者らでつくる「いのちのとりで裁判全国アクション」は、国に対して謝罪とともに、減額された保護費全額を遡そ及きゅうして払うよう主張。頭越しに専門委の設置を表明したことも遺憾だ訴えている。