被災から1年半ぶりの再開 地域密着特養とグループホーム〈福祉の杜わじま・石川〉
2025年07月14日 福祉新聞編集部
能登半島地震で被害を受けて休止していた石川県輪島市の複合施設「福祉の杜わじま」(社会福祉法人寿福祉会、北野和彦理事長)が約1年半ぶりに再開した。6月下旬から地域密着型特別養護老人ホーム、グループホームに利用者が入所し、7月になってデイサービスも始まった。休職していた職員も戻り、ようやく新たなスタートを切った。
3階建ての施設は一部で地盤が崩れ、広範囲にわたり建物と地面に最大50センチの隙間ができた。躯体に問題はなかったことから修復に向けて動いたが、工事業者がなかなか見つからず、工期も延び、再開までに想定以上の時間がかかった。修復費は約4億円。行政による災害復旧費の査定は秋ごろの予定だが、補助率(最大6分の5)がどうなるかは分からない。
地域密着型特養に戻ったのは元利用者も含めて29人。市内にある同法人の別施設に避難していた。グループホームには13人が入所した。峰岸洋介常務理事は「市内には要支援、軽度要介護の高齢者がおり、デイサービスも含めて利用ニーズはある」と話す。今後定員を増やす計画も立てている。
一方、職員は6月に休職から復帰した37人を含めて計81人。介護職員の中津拓也さんは、地震で自宅が全壊。昨年2月から休職し、一時は退職も考えたが、家族と相談して輪島市に戻った。今は仮設住宅に家族7人で暮らす。震災前は市内にある同法人の別施設に勤務していたため、「利用者の名前を覚えることから始めている。慣れるまで1カ月以上かかる」と言う。中津さん以外にも異動してきた職員が多く、相談しながら進めていく。
重い社保料負担
震災前、市内4拠点で270人の職員がいたが、約半数が退職した。当時、先が見通せない中、残った職員を解雇すべきか迷ったが、雇用を継続することを選択。職員を休職扱いとし、雇用保険の特例措置で手当を受給できるようにした。
そのため、再開にあたり職員確保に苦労することはなかった。しかし、手当には社会保険料(労使折半)がかかり、休職せずに勤務を続けた職員分も含め、その額は2024年1年間で1億4600万円に上る。いずれ返済しなければいけないため、峰岸常務理事は「災害で休業を余儀なくされ、実際には働いていないのに社会保険料を徴収する仕組みはどうなのか」と問題提起。今後の災害対応として検討するよう訴える。
再開にあたり「こうすればよかった」「こういう備えが必要だった」など、さまざまな思いが交錯する中、峰岸常務理事は「1年半は長かった。今も漠然とした不安は残っている。でも、再開は一区切りになる」と前を向く。