女性支援もっと身近に 法施行1年でシンポジウム
2025年04月29日 福祉新聞編集部
困難な問題を抱える女性支援法の施行から1年が経過したことを受け、同法による支援をもっと身近に感じてもらうためのシンポジウムが4月19日、都内で開かれ、約200人が参加した。自治体議員や市民団体による「多摩で女性支援法を活いかす会」が主催した。
同会は同法施行後も女性支援がアクセスしにくいままで有効に活用されていないとみている。改善するためにまずは実態を広く知ってもらおうと、寸劇を披露。都内の全市・区の女性相談支援員の配置状況などの調査結果も公表した。
寸劇で格差を問題提起
寸劇は同法に基づく一時保護をめぐり、保護期間中はスマートフォンの使用は一切禁止という誤った説明をする女性相談支援員の例と、スマホを使える方法を探る望ましい対応例を演じることで、自治体窓口での対応格差を問題提起した。
支援員の配置基準必要
また、都内26市と23区の実態を都内の議員が2024年夏に調べたところ、女性相談支援員の配置人数にも大きな格差があることなどが分かった。
例えば、港区は女性人口約14万人に対して女性相談支援員12人を配置。板橋区は女性人口約30万人に対し女性相談支援員は3人で、支援員1人当たりの女性人口は港区の約8倍に当たる。調査した議員は「国は早急に適正な配置基準を示すべきだ」と訴えた。
売春防止法の保護更生(第4章)の規定を大幅に見直すことで成立した女性支援法は、市区町村の責務を明記。女性相談支援員(旧婦人相談員)の配置はそれまでの「できる」という規定から「努力義務」に改めた。
厚生労働省によると、都道府県と市区町村に配置される女性相談支援員は24年4月1日現在、全国に1690人。前年に比べ95人増えたが、全体の8割は非常勤職員だ。配置された市区は全市区の54%にとどまる。
同日のシンポジウムで基調講演した戒能民江お茶の水女子大名誉教授は女性支援における市区町村の役割は大きいとし、「今回の都内の実態調査は画期的だ。実態を明らかにする取り組みが、ほかの自治体にも広がってほしい」と話した。