保育所と認定こども園の支出管理

2025年0417 福祉新聞編集部

1.保育所と認定こども園における支出に関する基本的考え方

保育所が受け取る対価の性格は「委託費」とされる一方、認定こども園が受け取る対価の性格は「施設型給付費」とされている。

対価の性格の違いは、繰越金、繰入金、積立金などに制約を受ける委託費と、制約を受けない施設型給付費といったように、支出面のマネジメントに影響する。委託費を受ける保育所の支出については「保育所委託費の経理等について」が出され、支出対象経費等、保育所における支出に関する基本的考え方が定められている一方、施設型給付費を受ける認定こども園については「保育所委託費の経理等について」(以下、通知)が適用されない。委託費を受ける保育所の支出の管理について記載する。

2.保育所における支出対象経費

(1)委託費収入の内訳通りの支出

通知では、人件費は、保育所に属する職員の給与、賃金等保育所運営における職員の処遇に必要な一切の経費に支出されるものであり、管理費は、物件費・旅費等保育所の運営に必要な経費に支出されるものであり、事業費は、保育所入所児童の処遇に直接必要な一切の経費に支出されるものであることが原則とされているため、委託費収入の内訳通りの支出が予定されている。

(2)最低基準等の順守といった一定の要件を満たす保育所

保育所最低基準が順守されている等の一定の要件を満たす保育所にあっては人件費、管理費または事業費については、各区分にかかわらず、当該保育所を経営する事業に係る人件費、管理費または事業費に充てることができること、とされる。さらに、①人件費積立資産②修繕積立資産③備品等購入積立資産に積み立てることができる、とされる。

3.複数年度での財務運営、施設整備費等財源

委託費を単年度で使い切らず複数年度において運営することについては、積立金及び繰越金として次のように認められている。

(1)保育所施設・設備整備 積立資産

2の(2)の積立資産に加え、毎年度第三者評価または苦情解決の仕組みを適切に運営している要件を満たす場合には、委託費の保育所施設・設備整備積立資産の積立が認められるほか、繰越金を①法人本部の運営に要する経費②同一の設置者が運営する第1種社会福祉事業及び第2種社会福祉事業並びに子育て支援事業の運営、施設設備の整備等に要する経費などに充てることができるとされている。

(2)繰越金の上限

繰越金は、委託費の適正な執行により適正な保育所運営が確保された上で、長期的に安定した経営を確保するために将来発生が見込まれる経費を計画的に積み立てた結果において保有するものであり、過大な保有を防止する観点から、当該年度の委託費収入の30%以下の保有とすること、とされ繰越金の上限が示されている。

4.法人運営という視点での繰り替え使用

法人運営という視点では委託費を繰り替えて使用することが次のように認められている。すなわち、委託費などの同一法人内における各施設、本部または収益事業などの事業区分への資金の貸し付けについては、当該法人の経営上やむを得ない場合に、当該年度内に限って認められる。

5.収支計算分析表の提出

委託費に係る当該会計年度の各種積立資産への積立支出及び当期資金収支差額合計が、当該施設に係る拠点区分の事業活動収入計の5%相当額を上回る場合、収支計算分析表を所轄庁に提出することが必要とされる。

6.保育所・認定こども園の施設整備補助制度

市町村が策定する整備計画に基づき、保育所や認定こども園などの施設整備事業を行う事業者に対して、国1/2、市区町村1/4の就学前教育・保育施設整備交付金制度がある。設置者の負担は1/4とされ、整備時には保育所施設整備積立金の取り崩し、償還時には民間施設給与等改善費として加算された額が借入金の償還、利息に対応可能な財源となる。

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