〈輪島ルポ〉能登半島地震発災8カ月 世帯丸ごと支援、重層支援がカギ

2024年0830 福祉新聞編集部
東北福祉大の学生と施設スタッフ(右端が石塚教授)

能登半島地震で、市域の半数以上の約6000棟が全半壊した石川県輪島市。1日、初めて災害復興公営住宅建設の動きが出た。だが、他市避難は続き、人の気配は薄い。災害ボランティアに入った東北福祉大(仙台市)の学生は「時が止まっている」。輪島市福祉課は「世帯丸ごとの支援、重層支援がカギになる」。発災から8カ月。倒壊ビルの解体計画も進み始めたが、なお全国からの支援が必要だ。

ゆがんだ輪郭

輪島市に1日夕着いた。街角で少年に聞いた。

「復興、どう」

少年は言った。

「少しずつ……。どこも壊れている……」

歩いて、すぐにわかった。「まっすぐ」がない。すべての輪郭がゆがんでいる。

民家や店舗の多くに、「危険」や「要注意」の貼り紙。しっかり建っているように見えても、立ち入り禁止だった。

少年の言葉は「正確」で、「切実」だったのだ。

解体、少しずつ前へ

2日朝、9人の障害者が通う福祉作業所を訪ねた。東北福祉大の学生5人が、石塚裕子教授らと共に輪島朝市などを回り、作業体験に訪れていた。

学生5人のうち3人は、東日本大震災の仮設住宅体験者。福島県で地震、津波、原発事故を体験した女子学生もいた。当時、小学2年。来春、看護師になる。

「おじいちゃんが津波で流されて……。近くにいた人が棒を投げてくれて間一髪、助かりました」

こう話した後、言った。

「輪島は、復興が止まったままのように見えます」

確かに、公費解体は進まず、終わるのは来秋の見通し。ただ、横倒しになったままの7階建てビルの解体が、国土交通省と市の協議で進む方向になるなど、動きは出ている。

住まい、決断の時

全壊2257棟、半壊3786棟(7月末時点)。ピーク時の人口約2万2000人のうち約6000人が市外へ避難した。

市内の仮設住宅は、予定建設戸数約2900戸のうち約2500戸が完成。「仮設後の暮らし」も見据え始めた。

災害復興公営住宅も、その一つだ。1日には輪島市門前町浦上の住民が市に対して、住民を集約する形で公営住宅を整備するよう求めた。住民代表は「互いに顔を見せ、声を掛け合えられる住環境の復活、維持が大事です」。

ちなみに、石川県が発表した7月1日時点の推計では、被災地6市町の人口は1月1日時点から4877人減少して11万4773人になった。

最も減ったのが輪島市。1536人減り、2万367人になった。

増える要介護申請

高齢者の介護予防が、課題だ。ADL(日常生活動作)の低下や認知力の衰えなどで、要介護申請が増えている。輪島市福祉課長寿支援室の坂出和彦さんは、「外に出る機会の創出が求められます」。

今後の課題について、福祉課主幹の羽村龍さんは「災害が起こると、高齢や障害、生活困窮などの縦割りがなくなり、世帯丸ごとの重層的な支援が必要になります」

そして、続けた。

「加えて、居住支援も必要となるため、相談支援体制を抜本的に再構築する必要があるのです」

民間人ボランティアバス

輪島市社会福祉協議会は、7月末までに延べ1万人以上のボランティアを受け入れた。事務局長の田中昭二さんは「金沢など市外への避難者が多く、『ボランティアに行きますよ』と言っても『ちょっとその日は帰れない』など、マッチングが難しい。ボランティアの依頼は、1日の時点で4000件を超えている。息の長い対応をしていきたい」と話す。

そんな中、寄り添う動きは続く。大阪府社協、堺市社協、大阪府市町村社協連合会は、28、29日の日程で、輪島市に初めて民間人に呼び掛けたボランティアバスを出す。24歳から77歳の民間人ら20人が汗を流す。