関西万博の大阪ヘルスケアパビリオン 設計から障害当事者らが参加

2024年0718 福祉新聞編集部

大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンの建設が、設計時点から障害当事者らの意見を取り入れて進んでいる。世界の先駆けにもなる包摂型のトイレゾーンの姿が見え始めた。展示の中心となる「リボーン体験ルート」のコース設定や内装、機器の使い勝手なども点検が進む。「プロセスも貴重な財産になる」。いろいろな特性のある「みんな」が、来春の開幕に向けてチャレンジしている。

大阪ヘルスケアパビリオンは、オール大阪による出展。健康維持や増進のための「ヘルスケア」をキーワードに、大阪府、市を含む産官学民が参加した。

テーマは「REBORN」。「人」は生まれ変われる、新たな一歩を踏み出す、という意味を込めている。

設計段階からの作り込みは、障害者、介助者、支援団体や公益社団法人大阪パビリオンの建築、展示、運営業務を担うスタッフ、作り手企業の関係者らで組織する「ユニバーサルデザイン(UD)推進チーム」のメンバーが行ってきた。

コロナ禍でのオンラインも含めて十数回、検討会を重ねてきた。

誰もが使いやすいミライのトイレ

成果の一つが、障害の有無やさまざまな特性に関係なく、誰もが使いやすいミライのトイレ。2月のワークショップでは、八つの機能別共用トイレや、授乳室などを設けたファミリーコーナーなどのレイアウトを落とし込んだ原寸大の図面を床に広げて、障害者らが実際に並んでみたり、歩いてみたりして検討した=写真

LGBTQの利用者もいる。表示(ピクトグラム)への意見や要望も出た。

検討を進め、トイレの名称は「みんなトイレ」(英語表記は「Inclusive toilet」)と決定。動線も改善された。

そして「コンセプトをきちんと示すことができれば、自然に利用者同士の譲り合いや声掛けの輪が広がる。利用者の意識を変えていくことができる」といった声に応えて、トイレの入り口に「みんなトイレ」の理念を示すコンセプトボードを設置した上、音声付き触知図を併置することも決まった。

リボーン体験ルート

「リボーン体験ルート」は、60分ぐらいが体験の目安。5月のワークショップでは、実際にルートの一部を体感した。

PHRポッドと呼ばれるブースのモックアップ(実物大の模型)に入って、広さや動線、モニター画面の操作方法などをチェックした。自分の健康情報を画面に入力すると、筋骨格、肌、脳認知、髪、歯などのスコアが得られる。その後、2階フロアへ行くと、これを基に生成された25年後のミライの自分のアバターと対面できる。

「大型の電動車いすの場合、ポッドに入れない」「文字表示を拡大できるようにしてほしい」。UD推進チームは今、こうした内容を検討している。

UD推進チーム 活動、閉幕後も

UD推進チームは今後、運営や広報のあり方、パビリオンで働くことになるスタッフの研修なども考えていく。さらに、来年4月13日から10月13日までの184日間の会期中のチェックや、万博閉幕後のまとめも行っていく方針だ。

パビリオンの担当者は言った。

「『みんなで作り込んでいく』というプロセスが大事です。プロセスで得た知見を発信していく。世の中の意識の底上げに、きっとつながります」