すっきり快便目指す運動法〈高齢者のリハビリ 69回〉
2023年11月24日 福祉新聞編集部「今日もウサギのウンチみたいなのが少し出たけど、便秘がつらいのよね……」と言っていた女性の施設入所者がいました。しっかり食事は取れているのに便秘はつらいですよね。便秘と聞くと下剤を選択されやすいですが、薬には頼らずに自然な排便ができることは誰もが気持ちのいいことです。
今回は、おなかのマッサージを含めた快便を目指す運動方法を二つ紹介します。先ほどの女性は右片まひがあったが、歩行や日常生活動作は一本杖を使用して自立していました。今回紹介する運動を数回行いましたが、当日または翌日には快便だったそうで、とても喜ばれていました。
姿勢に関わる筋肉を調整し、おなかのマッサージをすることで腸の活動が良くなることがあります。効果は人によって異なるため、すぐには効果が出ないかもしれません。ぜひ、毎日の運動習慣の一つとして参考にしてみてください。
運動方法と注意点
便がたまりやすい場所は、主に下行結腸(左腹部)とS字結腸(左下腹部)となります。便秘の原因はさまざまありますが、食事で栄養を取りつつ、適切な水分摂取や運動をすることが大切です。
運動前にはスムーズな排便を促すために、コップ1杯でもいいので水を飲んでおいてください。おなかが冷えすぎない方がいいので、水は常温か、さゆの方がお薦めです。
運動時の注意点としては、呼吸を止めないように大きく呼吸をしながら行いましょう。運動は可能な範囲で構いません。腹部の病気や治療中など問題がある場合にはやめてください。施設などで働く職員の人は、入所者と一緒に運動したり、自分でできない人には手伝いながら行ってください。
骨盤回旋運動
上向きに寝て両膝を曲げた姿勢で2種類行います。手は左右に広げ、両膝を90度程度に曲げ、膝を左右に倒します。5~10往復行います。次に同じ姿勢で、両膝を60度程度に軽く曲げ、同様に5~10往復します。膝は倒れる範囲で構いません。運動中は呼吸を止めないようにしましょう。
おなかのマッサージ
上向きに寝て両膝を曲げた姿勢で行います。マッサージする方向は、へその下から「の」の字をおなかに描くイメージです。軽い力でマッサージ、または、さするようにします。おなかに違和感や痛みが出ないくらいの力加減をしてください。マッサージは呼吸を止めないようにして3~5分間行いましょう。便がたまりやすい下行結腸とS字結腸を念入りにしてください。おなかのマッサージを介助者が行う場合には腹部の病気など問題がないか確認してください。
筆者=春口幸太郎 福岡和白病院
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長