地域共生社会の実現へ 明光會舘レキシア鷹匠(静岡)

2023年1120 福祉新聞編集部
鷹匠で初の夏祭りには安倍学園や地域のこどもも大勢参加した=明光会提供

新たな地域共生コミュニティーを実現し、次世代に継承することを目的に、60余年の歴史を刻む社会福祉法人明光会は、駿府城外堀跡に面した静岡市鷹匠町に拠点となる6階建ての「明光會館レキシア鷹匠」を今年6月に開所した。寺田亮一会長(83)は、「まだまだ福祉の真の意味が多くの人に知られ理解されていません。そこでここを発信の地と定めたのです」。来年4月に、障がい児者の人生の幅と選択肢を豊かにする障害者総合支援法に基づく大学を開設するための準備も始まっている。

 

「父である創立者の寺田銕は、知的の障がいがある高齢者からこどもまで、永年の教育現場での体験から、現在のままではその人たちが社会から取り残されると感じ、それには一緒に生活できる場=家族のように生活できる場をつくり、それぞれがその人に合った〝生活する力〟を身につけなければならないとの信念から、私財を投じてまで、施設を建てたのだと思います。その夫の思い、願いを成すために、病弱でもあった母・照がどれだけ苦労したかは、残された借用証や支払帳などからうかがい知ることができます」と寺田会長は述懐する。

 

「1960年、精神薄弱者福祉法が施行された年、建設時に精薄成人施設の細かい条文がなく、便法として生活保護法による救護施設(所)として発足。児童には児童福祉法を適用し、法体系の違う2施設を複合させた。銕先生の熱意が厚生省(現厚生労働省)を動かし実現した。ここを精神薄弱児者の教育の本拠地に」(「安倍野・創立50周年誌」2010年刊)

 

そこで現在、「安倍学園」「安倍寮」各種作業所などを運営、法人事務局長も勤める飯塚友紀常務理事(44)は「慈悲尾の施設、事業所、グループホームなど16カ所の掃除、洗濯を利用者がやってくれるようになったのです。外部業者任せを転換してのことですが、それが、利用者が自分の家と思ってもらえるようになった、とても大きいことです。銕先生のお考えに少し添えているかな」と優しく、利用者、職員に向ける眼差しで語る。

 

現場の第一線で働く3人の課長、主任クラスのスタッフは「やりがいは利用者の笑顔、感謝の言動、一所懸命言ってくれる『ありがとう』の言葉です」。それは言葉以前の利用者と職員の心と心の響き合いが生み出すものと見えた。それを物語るように施設に笑顔。木製の古いであろう廊下はちり一つ落ちていない。

 

安倍川沿いの山城の安倍城址を目の前にした法人本部から市内に入ると、特別支援学校行きのバス停留所近くに新築のモダンな「明光會館レキシア鷹匠」がある。1階にはしゃれた就労継続支援A・B型trois(トロワ)が店舗営業をする喫茶店。そこで利用者と一緒に働く寺田千尋理事長、静岡県社会福祉法人経営者協議会副会長(44)は、「ここでお客さんにお出しする食事、ケーキが障がいのある人が作っているからではなく、1日も早く『あのお店はおいしい、店員さんもやさしい』だから来ますという、地域の人に愛されるお店にしたい」。「私たちは〝笑顔〟をモットーに利用者(入所、通所)、職員、地域の三方みんな幸せ=福祉を目指しています」と、2児のお子さんの生活感覚も大切に、女性がより活躍する所を目指していると、もちろん男性もと柔らかく語る。

 

2階にある生活介護Lucia(ルチア)の見崎いづみ所長・サービス管理責任者(45)は、「慈しみの心を忘れずに、大切にして利用者の方にこれからも接し、職員を支える家族の方にも心を向けていきます」と力強く語った。

明光会=1959年、創立者・寺田銕が私財を投じ静岡市慈悲尾に用地確保。60年、社会福祉法人明光会として、国内初の精神薄弱児者(知的障がい児者)の総合施設安倍学園(定員50人)、安倍寮(定員50人)を開設。68年、知的障がい児通園施設・静岡市足久保学園開所(定員30人)。89年、重度障がい児者の生活訓練ホーム仰陽学園開設(通所定員20人)。2005年、静岡市が政令都市への移行に伴ない静岡市障がい児者地域療育等支援事業を市から受託。職員125人。