社会的養育推進計画の要領見直しは最大の課題〈こども家庭庁 支援局長インタビュー〉

2023年1011 福祉新聞編集部
吉住啓作局長

――初代の支援局長となりました。

 

支援局は虐待や障害などで支援が必要なこどもに対応する組織で、業務の多くを厚生労働省から引き継いでいます。行政の責任がまさに問われる分野であり、重責を感じます。

 

私自身はもともと内閣府の出身で、少子化対策や認定こども園などを担当しました。地方出向も含め官僚人生の3分の1を厚労関係に携わっています。

 

厚労省には多様な支援メニューを自治体に選択させる「統合補助金」という考え方や、政策を作る前に調査研究を行うといった仕事の進め方があります。そうした伝統を尊重しながら、新組織に見合う仕事のやり方を模索しています。

 

――8月には初の概算要求も出ました。

 

多くの事業が金額を示さない「事項要求」となり、年末の予算編成が勝負です。年3兆円台半ばの予算を確保する「加速化プラン」には、社会的養護なども含まれています。

 

中でも、市町村にある母子保健と児童福祉の機能を一体化するこども家庭センターには期待が大きい。妊産、出産、子育てまで伴走的に支援し、虐待予防につなげます。

 

――施設への期待を教えてください。

 

児童養護施設などにはケアニーズが高いこどもが増えており、より役割が大きくなります。法改正で措置解除後も施設で暮らせるのは画期的で、自立支援の強化も期待しています。

 

家庭養育優先の原則の下、里親委託や施設の地域分散化を進める方針は今後も変わりません。私見ですが、施設が地域に分散することはある意味、社会的養護の理解を地域で広めることにもつながる。インクルージョンな社会づくりこそ支援局のミッションです。

 

――審議会では社会的養育推進計画に関する策定要領の見直しも進んでいます。

 

策定要領の見直しは、支援局の最大の課題の一つです。

 

里親委託を進めることは重要ですが、中には特定の大人との関係づくりが苦手なこどももいます。気持ちにしっかりと耳を傾け、こどもが自分に合う支援メニューを選べることが重要です。施設も役割を果たしてもらいたいと考えています。

 

――こども家庭庁の発足では少子化対策の議論が多く、社会的養護に光が当たっていないとの声もあります。こども未来戦略方針でも記述はわずかです。

 

記述の文量が少ないから政府が軽視しているわけではありません。小倉將信前大臣も社会的養護の現場をしっかり視察しており、加藤鮎子新大臣にもさまざまな現場に足を運んでいただく予定です。

 

私もさまざまな現場を拝見しましたが、支援局こそこども家庭庁の存立意義だと思います。扱うテーマは一つひとつとても重い。政府として今後も重要視する姿勢は変わりません。

 

吉住啓作=1966年生まれ。石川県出身。京都大卒。1990年4月、旧総務庁入省。