改正DV防止法案を閣議決定 精神的暴力にも保護命令

2023年0309 福祉新聞編集部

 政府は2月24日、配偶者からの暴力(DV)防止法の改正案を閣議決定した。裁判所が被害者への接近などを禁じる「保護命令」の対象に、「精神的暴力」を加えることが柱。言葉や態度で相手を追い詰めることも暴力と捉え、被害の拡大を防ぐ。命令に違反した場合の罰則も強化する。今国会での成立を目指す。施行は2024年4月1日。 

 

 保護命令は、裁判所が必要と判断すれば発令される。現行法では「身体に対する暴力または生命に対する脅迫」を受け、「生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」が当たる。

 

 改正法案は脅迫の内容に「自由、名誉、財産への加害」を加える。

 

 DVの本質は力で支配することで、「長時間、正座させて説教する」「相手の行動や交友関係を制限し自らの支配下に置く」など形態はさまざまだ。

 

 自治体の相談支援センターなどに寄せられる年間20万件弱のDV相談のうち、約6割は精神的DVだが、保護命令が出るのは約1500件に過ぎない。

加害親との面会交流 子の意見表明がカギ

 精神的なDVへの理解が深まれば、保護命令の件数が増える可能性がある。保護命令に至らない場合でも、加害親と離れて暮らすこどもの面会交流を抑える効果がありそうだ。

 

 そう期待する人の一人が伊東直子さん(40代後半)。都内で息子(13)、娘(10)と暮らすが、3年前に離婚した元夫とこどもの面会交流に胸を痛めている。

 

 元夫は高給取りで昇進も重ねるエリート。しかし私生活ではギャンブルにのめり込み、散財すると荒れた。殴る蹴るはないが、思うようにならないとこどもの前でも激高し、「家に火をつける」「お前はおかしな家系だ」などと深夜まで何時間も罵倒した。

 

 別居後、元夫は付きまといや大量のメール送信を重ね、こどもとの面会交流を家庭裁判所に申し立てた。家裁がこどもに意見聴取したのは1回のみ。伊東さんやこどもが感じた恐怖は重くみられず、月1回2時間程度の面会交流を命じる審判が下った。

 

 「この先も続く面会によってこどもの心身の成長に支障が出ないか心配だ」と話す伊東さん。DVの場合は加害親との面会をこどもが強制されない仕組みにするよう求める署名活動をしている。

 

 元家裁の調査官で、面会交流を経験したこどもの調査も手掛けた熊上崇・和光大教授は「社会全体で精神的DVへの理解を深め、こどもの意見表明を支えることが必要だ。児童福祉施設の関係者もこの問題に関心を持ってほしい」としている。

 

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