困難女性支援法の基本方針づくり開始〈厚労省有識者会議〉

2022年1116 福祉新聞編集部

今年5月に成立した「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」に基づく国の基本方針づくりがこのほど始まった。厚生労働省が11月7日、有識者会議の初会合を開き、基本方針の骨子案を提示。2024年4月の法施行に向け、23年3月に決定する。都道府県には、基本方針を踏まえて施策の実施計画を作る義務が、市町村には努力義務がある。

 

 有識者会議座長の戒能民江・お茶の水女子大名誉教授は同日の会合で「今日は新しい扉を開く第一歩だ。法律の理念を実効性のあるものにするため、使える基本方針をつくっていきたい」と語った。

 

 骨子案によると、支援内容は「早期発見・アウトリーチ」「相談支援」「被害回復支援」など八つ。施策の対象者や支援に際しての基本的な考え方も示す。

 

 新法は婦人保護事業を売春防止法から抜き出して刷新した。売春防止法は売春を行う恐れのある女性を「要保護女子」と規定。婦人保護施設(入所施設)をはじめ婦人保護事業の対象者とするが、懲罰的な要素の濃い制度だと指摘されてきた。

 

 新法は対象者を「性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性などにより困難な問題を抱えた女性」とし、基本理念に「福祉の増進」「民間団体との協働」「人権の擁護」を掲げたが、その具体化を図る際の根拠が基本方針になる。

村木元次官「自治体も変革必要」

 有識者会議に先立ち、若年女性の支援団体「若草プロジェクト」(大谷恭子代表理事)が3日に都内で開いたシンポジウムで、村木厚子・元厚生労働事務次官が新法に関連し、「自治体のマインドが変わらないといけない」と語った。

 

 都道府県が設置する婦人相談所では、対象者の捉え方にばらつきがあることが問題視されてきた。村木元次官は「たくさんあるハードルのどれか一つでも目詰まりすると女性に支援が届かない。(支援者側が)見なかったふりができない、いやらしい仕掛けをつくってほしい」と要望した。

 

 対象となる女性が支援につながった後の問題も少なくない。

 

 都内の婦人保護施設で施設長を務める熊田栄一さんは「児童養護施設から出る時に受けられる奨学金が、婦人保護施設から進学する時は受けられない例がある」と指摘。近年増えた若年入所者にも個別対応するには、施設の人員配置基準の改善が不可欠だとした。

 

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