共同送迎で負担軽減 民間企業との協働も視野に〈黒部市社協〉

2022年0608 福祉新聞編集部

 富山県の黒部市社会福祉協議会は5月から、市内の社会福祉法人が送迎バスを共有する実証実験を開始した。福祉人材難が続く中、移動手段を最適化することで、法人の負担軽減につなげるのが狙い。今後は参加団体を福祉分野以外に広げることも視野に入れ、事業化を目指すという。

 

 実証実験にあたり黒部市社協は5月19日、トヨタモビリティ富山とSMARTふくしラボと協定を締結した。

 

 ふくしラボは、同市以外の地域も含めて福祉分野のデジタル化を進めるために黒部市社協が立ち上げた団体。トヨタは車両の管理などで協力するという。

 

 今回の実験に参加するのは、ケアハウスやデイサービスなどを運営する社会福祉法人黒部笑福学園と、就労継続支援B型を運営する社会福祉法人くろべ福祉会。平日、黒部市社協が運営する同市福祉センターの通常送迎に、障害者の送迎と、高齢者の外出と買い物支援を組み合わせる。

 

 試算によると、年間の延べ利用者は、黒部市社協が運営する福祉センターが3450人、くろべ福祉会のB型事業が1610人、黒部笑福学園の高齢者が920人。共同運行することで、乗車人数は増え、全走行距離が20%減ることになる。

 

 一方、試算ではくろべ福祉会の負担金は年42万円。これまでB型事業の送迎にかかるコストが年50万円だったことから、年8万円の削減になる見込みだという。

 

 黒部市社協がこうした取り組みを始めた背景には、福祉分野の人材難への危機感がある。昨年市内の福祉事業所94カ所に対して、車両に関する負担について聞くと、職員の6割が送迎に負担を感じていた。また、運転手の採用も簡単にはできないことから、現場の支援者が運転するケースも少なくなかった。

 

 このため、黒部市社協は利用者の送迎を共有することで、職員の負担軽減につなげ、本業であるケアの質向上につなげたい考えだ。

 

 実験の期間は3年で、課題などを分析。その後、黒部市内だけでなく、近隣の福祉事業所にも、送迎の共同運行や車両共有を呼び掛けたい考えだ。

 

 同時に福祉分野だけでなく、新聞や弁当などの配達車両も巻き込むことも視野に入れ、民間企業との時間帯をずらしたシェアの仕組みも検討している。

 

 黒部市社協の小柴徳明さんは「福祉事業所を中心に移動資源を共有して、デジタルで一元管理することで、地域の移動シェアサービスを作りたい」と話している。

 

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