困難女性に住まい「わたしのお家」 通勤・通学、スマホもOK(神奈川県)
2025年02月02日 福祉新聞編集部神奈川県は1月23日、安心して住める場所がない女性の自立支援施設「わたしのお家(うち)」(6戸)を開設した。法律に基づく認可施設ではなく、横浜市内の住宅街にある2階建ての民間アパートだ。県独自の事業を受託した社会福祉法人久良岐母子福祉会(長井晶子理事長、同市)が借りて運営する。厚生労働省は「先進的な取り組みであり、注目している」(社会・援護局女性支援室)という。
県が独自事業
オープン翌日に入居した女性(20代)は真新しいエアコン、冷蔵庫、洗濯機などがそろった居室に驚き、「散歩しようと階段を下りたら近所の人があいさつしてくれた」と住み心地の良さを語る。
家賃の自己負担はなく、風呂・トイレも各戸に完備。スマホの持ち込みもOKで、通勤や通学もできる。〝施設〟とは言うものの、生活上の制約が少ない点が特徴だ。
県は「社会とのつながりを保ちながら自立を目指したい人のニーズを重視した」(共生推進本部室)とする。一方、配偶者らの暴力から逃れるために身を隠す必要のある人は対象外という。
自己決定を支える
通常のアパート暮らしに近いが、大きく異なるのは久良岐の専従スタッフが1階事務所で待機し、日々の暮らしや将来について相談に応じる点だ。
今年度の委託費は3500万円。スタッフの代表で、久良岐の乳児院や母子生活支援施設に勤務してきた田代安昭さんは「入居する女性の自己決定を支えるのが私たちの役割だ」と意気込む。
「支える」の中身は一人ひとり異なるが、就労先や退居後の住まいを探すこと、役所での手続きに同伴することなどを想定。女性が未就学児を同伴する場合は、こどもの保育も一部担うという。
つながりやすさ重視
「わたしのお家」は売春防止法から「困難な問題を抱える女性支援法」(新法、2024年4月施行)に移った女性自立支援施設(旧・婦人保護施設)ではないが、県は新法に基づく基本計画に明記した。
従来の婦人保護施設と異なり、利用する側にとってつながりやすく、出やすい通過型(6カ月程度の入居期間)の施設にしようというのが狙いだ。
しかし、入居するには、まず市町村の女性相談窓口にアクセスすることが必要となる。その上で、県の女性相談支援センター(旧・婦人相談所)が入居の可否を決める。心身共に疲弊した女性にとってハードルが低いとは言いきれない。
久良岐の鈴木八朗常務理事は「市町村の女性相談支援員をはじめ、多くの支援者にこの事業をよく理解してもらえるよう働き掛けていきたい」としている。