ソーシャルワークは「出会い」から 元市職員がネット配信(横浜・寿地区)

2024年0613 福祉新聞編集部
右から大川さん、長谷川さん、山下さん

日雇い労働者や簡易宿泊所で知られる横浜市寿地区でケースワーカーを務めた3人の元市職員が1日、ソーシャルワーク(SW)をテーマに議論し、ネットでライブ配信した。3人は寿地区で暮らす人との出会いが自身のSW実践の原点にあるとし、相互理解を生み出す場が人材育成に必要だと提言した。

公設民営の交流拠点「横浜市ことぶき協働スペース」(徳永緑施設長)の主催。排除や孤立のない社会づくりをするため、寿地区で働いた元職員の経験に学ぼうと企画した。

長谷川俊雄・白梅学園大名誉教授は、寿地区で小説の登場人物のような波瀾はらん万丈な人生を送る人たちと出会ったと回想。「大学で習ったことは何一つ役に立たず自分の非力さと無力さに直面した」と話した。

その上で「同じ時間とテーマを共有して語り合う場があってこそ援助職は育つ。伴走支援という言葉があるが物理的にそばにいるだけでは駄目」と主張。相互理解によって援助職も援助される循環をつくることが共生社会につながるとした。

「出会う」ことによるモノの見方の広がりを語ったのは大川昭博・同市港北区生活支援センター所長だ。「例えば犯罪者という人はいない。その人をさまざまな角度から見ればそれが分かる」とし、援助職の価値観で本人の強みや弱みを評価するのも危険だとした。

刑務所出所者の社会復帰支援に携わる山下康・神奈川県地域生活定着支援センター長も、「福祉が届かず、罪を犯さざるを得なかった人の生きづらさを見つめ、社会に発信することがSWの使命だ」と話した。

この日の議論を収めた動画は6月中に「ことぶき協働スペース」のユーチューブチャンネルで配信される。