障害年金の特例さらに10年延長 厚労省、未納者を救済
2024年08月05日 福祉新聞編集部障害年金を受給できるよう保険料未納者を救済する特例について、厚生労働省は10年間延長する方針を7月30日の社会保障審議会年金部会(座長=菊池馨実早稲田大法学学術院教授)に示した。委員からは賛同する意見が上がり、2025年の年金制度改革に反映される見通しだ。
特例は保険料を長期間納めていなくても、初診日のある月の前々月までの1年間に未納がなければ納付要件を満たすとする救済措置で、「直近1年要件」と呼ばれる。
1985年の改正以降10年ずつ特例期限が延長され、現在、2026年3月31日までとされている。保険料を納めてきた人には不公平感があるため、この特例を廃止すべきという意見がある。
一方、この特例によって障害年金を受給する人は、特例がなくなると生活の前提が崩れる。厚労省はさらに特例を10年間延長しつつ、受給の実態を把握するという。
初診日要件も課題
障害年金をめぐってはこのほか四つの課題がある。その筆頭は「初診日要件」だ。
現行制度は初診日を保険事故が発生した日と捉える。そのため、会社勤めをしている時に発病して退職し、それまでの厚生年金から国民年金に移った後に初診日がある場合、受給額は相対的に低い国民年金の額になる。
負担してきた厚生年金の保険料に見合わない受給額になり、不合理だとする指摘があるため、何らかの救済措置が求められていた。
厚労省は厚生年金の被保険者でなくなった後も一定期間内に初診日があれば給付対象とする「延長保護」という措置や、厚生年金の保険料納付期間が一定以上あれば給付対象とする「長期要件」という措置を講じることを論点とした。
いずれも、保険加入中に発生した保険事故に給付するという保険原理から外れるため、慎重な意見があるが、障害年金に詳しい百瀬優委員からは「1年程度の延長保護は許容されるのではないか」とする意見が上がった。
この点は他の課題と同様、年末の取りまとめに向け検討される。次期年金制度改革で厚労省は、働き方に中立的な制度を目指し、ライフスタイルの多様化を反映する方針。遺族厚生年金では給付をめぐる男女差を20年程度かけて段階的に解消する考えだ。