ALS患者が勝訴 さいたま地裁、訪問介護の支給量で 

2024年0523 福祉新聞編集部

全身の筋力が低下する難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を患う男性(48・埼玉県吉川市)が同市に対し、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護を24時間態勢で給付することなどを求めた訴訟の判決が8日、さいたま地裁(田中秀幸裁判長)であった。

田中裁判長は男性側の訴えを一部認め、同市に1日当たり約19時間の給付と損害賠償など約138万円の支払いを命じた。

男性は介護を担う妻の負担が大きかったため、2019年ごろから24時間態勢の訪問介護の給付を求めたが、同市は1日当たり約13時間しか認めなかった。

田中裁判長は、当時妻は3人の子育てがあり、男性の介護ができるのは1日2~3時間にとどまると判断。「妻にとって過度な負担ではないかという検討を怠っていた」として市の決定を違法だとした。

一方、家族が介護する時間を差し引いて市が支給決定すること自体は市の合理的な裁量の範囲であり、違法でないとした。

男性は20年に妻と離婚し県内の別の市に転居。現在の居住地では十分な介護サービスが受けられているが、本来は吉川市も24時間態勢の給付を認めるべきだったとして21年に提訴していた。

また、19年4月に行われた給付申請の調査で、男性が目の動きと文字盤を用いて回答したところ、同市職員が「時間稼ぎですか」と発言したことについて判決は「誹謗中傷的な発言というほかない」と指摘。慰謝料5万円を含む約138万円の支払いを市に命じた。