高齢者の救急搬送抑制へ 医療と介護の連携で〈厚労省〉
2025年09月09日 福祉新聞編集部
2040年を見据えた新たな地域医療構想に関連し、厚生労働省は介護保険施設が入所者の緊急時の対応をあらかじめ医療機関と申し合わせておくことを促す方針だ。肺炎や尿路感染症といった疾患は、適切に対処すれば、病院に搬送しなくても済むとみている。医療と介護の連携により、今後の救急搬送の急増を抑制したい考えだ。
8月27日の地域医療構想に関する検討会(座長=遠藤久夫学習院大学長)で明らかにした。介護保険施設を経営する立場の委員からは「入所者が望まない入院を防ぐためにも、この点は議論を深めるべきだ」とする意見が上がった。
また、専門的な研修を受けた看護師が介護保険施設を訪問し、感染症予防や看み取とりケアなどの支援に当たる取り組みを、病院独自ではなく都道府県単位で調整することも促す。
厚労省によると、介護保険施設から救急搬送される人は2021年は45万人だったが、40年は67万人に膨れ上がる見込み。限りある医療資源を有効活用するには、外来診療などで対応可能な疾患の人の救急搬送を減らしたい考えだ。
年間の死亡者の死亡場所の推移をみると、介護施設で死亡する人の割合は年々増えており、10年は全体の4.8%だったが、22年は14.9%に増加。病院の経営者側の委員は「介護施設での看取りをもっと増やすべきだ」と要望した。
地域医療構想は医療機関や人員を適正配分するための構想で、都道府県は26年度に医療提供体制全体の方向性を決める。厚労省はそのための指針を今年度中に作る方針だ。