働きやすい介護の職場 総理大臣表彰に茨城の社会福祉法人北養会
2025年09月07日 福祉新聞編集部
政府による働きやすい職場環境づくりに取り組む介護事業者の表彰式が8月27日、首相官邸で開かれた。内閣総理大臣表彰に社会福祉法人北養会(茨城県)と、(株)トライドマネジメント(横浜市)が選ばれた。機器導入による生産性向上や離職率減少などが評価された。
表彰は政府が2022年末にまとめた「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」に基づき、23年度から始まった。職員の待遇改善や生産性向上など優れた取り組みの普及などが目的だ。
北養会が運営する特別養護老人ホームもくせいは22年12月、組織変革チームを結成。もともと異動があまりなかった職場で配置転換を行い、機器の戦略的活用も進めた。
具体的には、マットレスの下に敷けば利用者の覚醒や離床などの状態がモニターで分かる見守り機器「眠りSCAN」の活用を推進。その結果、夜勤1人当たりの巡視時間が53分から26分、排せつ介助時間も180分から90分と半分に減少した。これにより年230万円のコスト削減につながった。
変化が乏しい環境を打開しようと外部の研修を増やした。また地元のアパレル企業と職員のユニホームを共同制作したり、スポーツチームとイベントを開催したり異業種との連携を深めた。
このほか、男性職員の育児休業も促進。さまざまな施策を実行したことで、職員の有給休暇日数は平均で10.1日から12.5日に増加した。23年に4.9%だった離職率は24年にゼロになったことも評価された。
居宅介護支援を行うトライドマネジメント社は、事業所と電子的に情報連携を進める「ケアプランデータ連携システム」を導入し、従来、月2100枚使用していた紙を1350枚に削減。また貢献度の評価シートを新たに作り、評価に応じて賞与額を決定する仕組みにした。
その結果、ケアマネジャー1人当たりの要介護者の担当は34.5人から43.7人に増えた。平均年収も427万円から491万円に上昇したという。
表彰式で石破茂首相は「生産性向上の努力は、高齢者に質の高い介護を提供すると同時に、職員がやりがいを持つために必要な取り組みだ」と述べ、今後もテクノロジーや人材育成などを進める考えを強調。厚生労働省には好事例を全国に広げるよう要請した。
このほか、厚労大臣表彰優良賞には社会福祉法人の敬友会・ケアハウスあおさぎ(岡山県)▽白寿会・サンシティ北条(愛媛県)▽聖隷福祉事業団・奄美佳南園(鹿児島県)など4団体が選ばれた。