賃金格差に危機感 磯会長、制度転換訴え〈経営協全国大会〉

2025年0928 福祉新聞編集部
磯会長

全国社会福祉法人経営者協議会(磯彰格会長)の全国大会が18、19両日、ヒルトン福岡シーホーク(福岡市)で開かれ、1500人が参加した。基調報告で磯会長はこれまで縮小傾向にあった全産業平均と福祉分野で働く人の賃金格差が再び開きつつあることに危機感を表明。物価に連動して介護報酬などを引き上げる制度への転換を改めて訴えた。

財務省は今年5月に「介護分野にばかり人材が集中するのは適切でない」とする建議を発表。これを受け経営協は地域ごとに要望活動を実施。結果的に6月に政府がまとめた骨太の方針では、福祉分野の処遇改善などが明記された。

一方で、厚生労働省によると、2024年度の全産業平均の賞与込み月給は38万6000円。これに対して介護職員は30万3000円と8万3000円も低い結果となった。20年時の差は5万9000円だったことから、再び差が広がっていた。

大会で磯会長は全産業平均との賃金格差について「今後も差が開くことは想像に難くない」と指摘。「骨太に賃上げが盛り込まれたのは大きな成果だが、年末までが勝負。皆さんと力を合わせて乗り越えたい」と述べ、今後もデータに基づいた政策提言を行う決意を示した。

また、社会福祉法人の経営をめぐっては、物価高騰も大きな課題となっている。24年と25年の1月時点を比較した経営協の独自調査によると、電気が120%、ガスが110%、給食材料代は113%になっていた。

磯会長は福祉医療機構の調査でも社会福祉法人の赤字割合が数年にわたって3割に上る現状を紹介。今後も物価上昇が続く可能性にも触れ「処遇改善や物価対策が確実に現場に届く仕組みが必要。賃金や物価に連動して介護報酬などを引き上げる制度や、交付金によらない物価対策を求めて、国や自治体に粘り強く意見を出したい」と話した。

その一方で磯会長は、10年前の会長就任以降、会員の社会福祉法人による公益的な活動が広がっている実績をアピールした。

孤立対策や引きこもり支援など、地域における公益的な取り組みを実践している割合はこの10年で倍以上に伸び92%に達した。また、大災害時に備えた災害派遣福祉チーム(DWAT)の登録者は1万人を超えたという。

磯会長は「今や社会福祉法人は福祉の枠にとどまる存在ではない。地域の課題に向き合い、共に解決する地域の一員として、役割を拡張し続けている」と語った。

1 Comment
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る