中学生に保育の価値発信 裾野広げたいとフェア〈大阪・泉北ニュータウンのこども園〉
2025年05月24日 福祉新聞編集部
高度経済成長期に、都市近郊に生まれたニュータウン。少子高齢化の波が押し寄せる中、「保育の裾野を広げたい」と堺市に広がる泉北ニュータウンの18の幼保連携型認定こども園の園長が立ち上がった。初めて中学校にも足を運び、保育の職場体験などを呼び掛けた。31日には、フェア「推し!ごと(お仕事)にしよう」を開催。ワークショップも取り入れて「保育の価値」を強く発信する。
南海泉北線「泉ケ丘駅」から歩いて15分、堺市南区茶山台の泉北園。
「31日のフェアは、単なる人材確保ではなく、保育本来の価値を伝えて、保育理解者の分母を大きくする。それが狙いです」
中辻忠行前園長(65)、山岨俊彦ひなぎくこども園長(40)、谷口拓峰竹城台東保育園長(34)は、こう話した。
独自予算、大学と協定も
泉北ニュータウンの歩みをみる。
開発は高度成長期の1965年から始まった。人口は92年の約16万人をピークに減少、現在は約11万人。高齢化率は37%を超え、全国平均(29.1%)よりも高い。14歳までのこどもの数は10%を下回り、多くのこども園で定員割れが起きている。
「泉北ニュータウンは、先細りが懸念される日本の保育の5年先の姿だ」
こんな声が聞かれる中、18園の園長は2022年6月5日と8月28日、行政に頼らず独自予算で「堺市南区ほいく就職フェア」を開いた。来場者は、それぞれ38人と15人。「次の一手が必要」と痛感した。
「大学と手を結ぼう」
22年11月、南区役所、大阪府福祉人材センターと一緒に桃山学院教育大(現桃山学院大)、23年4月に大阪健康福祉短期大と協定を締結。インターンシップや保育実習を受け入れる一方、学生が就職フェアに参加する道筋を広げた。
23年6月4日、18園のブースに相談コーナーを新設するなどの工夫を重ねて3回目の独自フェアを開催。大学との協定の効力もあり、来場者は一気に116人となった。
中学、高校を回る
その2カ月後の23年の夏休み、ニュータウンにある七つの高校を回り、広報活動を展開した。福祉を学ぶ学生が減り、定員割れになっている現実を提携大学から知らされ、「改善の一助に」との思いもあった。
翌24年6月2日に第4回フェアを開催。来場者は131人となった。
そして4カ月後の24年10月、大阪千代田短期大(河内長野市)とも協定を締結。さらに今年3月、ニュータウン内の8校の中学校を回った。
「保育士になったきっかけは、中学時代の職場体験です」。こんな若い保育士の言葉にハッとして、中学校に「ぜひ、職場体験を。フェアにも来てください」と呼び掛けた。
おしごとフェア
今春、インスタグラムの配信を始めて「保育の一日」をアップ。チラシにQRコードを張って、スマホで誰もが見られるようにした。
そして31日の土曜日午後、「みなみく ほいく おしごとフェア」を開く。会場は、「泉ケ丘駅」近くの国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)。最大定員1500席の多目的ホールを使う。キャッチコピーを「推し!ごとにしよう!」と変えて、スタッフのTシャツも新調した。
会場では初めてワークショップも行う。提携3大学の学生と現職の保育士が、缶バッジ作りなどを指導。中高生らにも保育シーンを体験してもらう。
「保育の仕事は、やりがいがあり、夢があります。処遇も年々、改善されています。0歳だったこどもが6歳になって卒園するとき、園児も保育士も号泣します。保育士も共に成長するのです」。中辻さん、山岨さん、谷口さんは、「保育の輝き」を熱く話した。