社会福祉法人の貢献力アップ 施設と社協主軸の新体制〈大阪しあわせネットワーク〉

2025年0413 福祉新聞編集部
新推進室長の徳本玲子さん(前列左端)、主事の山下拓真さん(後列左端)と6人のしあわせネットワーカー=1日、大阪府社協

オール大阪の社会福祉法人による貢献力が評価されている「大阪しあわせネットワーク」の体制が1日に一新され、3年後の2028年春に、包括的支援と重層的支援の完全構築を目指して始動した。府域で展開するしあわせネットワーク事業と、市区町村社会福祉協議会に事務局を置く社会福祉法人の地域貢献委員会(施設連絡会)の連携を一層強化することで、福祉法人の社会貢献力を格段に高める新しい「大阪モデル」への挑戦だ。

ネットワーカー誕生

市区町村社協がハブ(軸)になって、地域それぞれの色を持った「ミルフィーユのような幾重もの支援」を創る。その実現をけん引するのが、1日付で大阪府社協の社会貢献推進室に誕生した6人の「しあわせネットワーカー」だ。

推進室は大阪しあわせネットワークの事務局を担っており、室長も宮本明子さん(1日付で地域福祉部副部長)から、徳本玲子さんに引き継いだ。

3月までは、推進室から「社会貢献支援員」が現場に出向いて施設のCSW(コミュニティーソーシャルワーカー)や保育所・こども園のSSP(スマイルサポーター)らと一緒に、府域と市区町村域の活動の「ペダル」を踏んでいた。

4月からは、この「社会貢献支援員」が発展的に「しあわせネットワーカー」となり、今までだと登れなかった坂道を、大阪市や堺市など、政令市も含めた府下全域の仕組みや仕掛けを、推進室を拠点に俯瞰しながら企画・開発することによって登れるようにする。いわば、「電動アシスト」のような役割を担う。

市区町村社協が主体

新ワーカーは、府下を北(北摂、河北)、南(河南、泉州)、政令市(大阪市24区、堺市7区)の3エリアに分けて、施設と地元社協を結び、プラットフォームづくりをサポートする。

総じて言えば、社会福祉法人の地域貢献実践を生かした大阪らしい包括的、重層的支援体制の「共創」に集中する「アシスト専門職」だ。

ネットワークは15年春の発足から10周年。この間、福祉法人を取り巻く人材確保難や物価高騰、コロナ禍での対応など、経営環境が厳しく変化し、持続可能な事業の在り方を考える必要が生じた。

「共生社会の実現には、もっと地域ぐるみの組織的な活動が必要だ」

そんな問題意識から、施設を持つ社会福祉法人や府社協だけでなく、地元の市区町村社協が主体的に動ける体制を構築するプランを検討。この1年間、寝屋川市と交野市が「モデル市」となり、検証を続けた。

重なり合う葉っぱ

「ここでいう『重層的支援』は、国の『重層的支援体制整備事業』ではありません。もっと広い意味です。重層的支援を洋菓子の『ミルフィーユ』に例える人もいます(ミルフィーユはフランス語で1000枚の葉っぱ)。住民、施設、社協、民生委員・児童委員、自治体、企業、ボランティア、学校……。いろんな葉っぱが、地域で包括的に重層的に動いて共生社会を実現していく姿です」

府社協常務理事の森垣学さんは、こう話した。

3年後に大阪モデル

「モデル市」の検証に呼応して、具体的な動きも出ている。河内長野市では3月17日に施設連絡会(地域貢献委員会)とCSW・SSP連絡会の合同会議を初めて開催。八尾市では昨年末に、種別を越えたCSW連絡網を構築、八尾市社協も連絡網に加わった。

府社協老人施設部会が04年に立ち上げた「生活困窮レスキュー事業」を前身とする大阪しあわせネットワーク。その活動は、制度の狭間にいる人々への支援だった。そこに、福祉法人の力を格段に強化して、さらなる光を当てる。発足10周年。3年先を見据えた挑戦が始まった。

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