賃金増と物価高の影響 全国社会福祉法人経営者協議会主催の障害福祉経営セミナー
2025年03月27日 福祉新聞編集部
全国社会福祉法人経営者協議会の障害福祉事業経営セミナーが12日に開かれた。久木元司障害福祉事業経営委員長は経営状況について「2024年度障害報酬はプラス改定だったが、賃金上昇、物価高騰を相殺すると現実的なプラスは縮小するのではないか」との認識を示した。
経営協は現在、24年度報酬改定の検証調査を行っている。62法人、81施設の回答を整理した1次集計では、経営への影響について「好転」が26%、「悪化」が24%で、「どちらともいえない」が50%で最多だった。
処遇改善について従来の加算を一本化し、24年6月に施行された新加算に移行したのは95%で、そのうち84%は加算率が最上位の加算Ⅰを算定していた。加算の配分方法は76%が職種を限定せず配分していたが、66%は持ち出しによる賃金改善も行っていた。
また、厚生労働省が調査研究を進めている障害者支援施設の今後の在り方について、久木元委員長は1次集計をもとに「第1種社会福祉事業としての役割を認識すること。地域移行を進め、個室化や生活単位の小規模化の課題をクリアしていきたい。日中と夜間の場の区分けも考えていく必要がある」と整理した。
続いて講演した平野方紹元立教大教授は、24年度報酬改定について「障害者支援施設に地域移行などの意向確認体制が26年度から義務化されたことにより、原則すべての利用者が地域移行の対象になった」と解説。地域生活支援が難しいのは地域で障害者は特別な存在とされているためで、施設には誰もが安心して地域で暮らせることを発信する役割があるとした。
セミナーは東京都千代田区の全国社会福祉協議会・灘尾ホールとオンラインで開かれ、約240人が参加した。社会福祉法人の事業展開と今後の障害者支援施設をテーマとするディスカッションも行われた。