児童養護施設中心の拠点が千葉に誕生 高齢、障害も一体整備(福祉楽団)

2025年0318 福祉新聞編集部
藤堂施設長(左)と飯田理事長

社会福祉法人福祉楽団(飯田大輔理事長)は3月1日、児童養護施設を核とする複合型の福祉拠点「実籾パークサイド」を千葉県習志野市に開設した。高齢者や障害者を支援する事業所なども一体的に整備。交流スペースやバスケットコートを併設するなど住民が日頃から関われる仕掛けづくりも進めることで、前例のない福祉の拠点を目指すという。

「こどもや高齢者、障害者などを対象に、入所・通所・訪問の支援をする複合的な施設。地域の人が自由に入れるのがコンセプトだ」――。

開設に先立ち行われた竣工式。地域の自治会や学校、区役所、行政などの関係者が並ぶ中、飯田理事長はこう訴えた。

拠点は京成本線実籾駅から徒歩10分の場所にあり、敷地面積は6100平方メートルほど。児童福祉事業を行う「ハウス」、高齢者と障害者を支援する「テラス」、児童家庭支援センターも入るオフィス棟などがある。

中でも核となるのは、こどもが暮らす8軒の児童福祉施設だ。児童養護施設が6軒、一時保護専用施設とショートステイが各1軒あり、それぞれ最大6人が暮らせる。

いずれも一般住宅で使用する建材を使用しており、家庭的な雰囲気にこだわった。リビングの中央には千葉県香取市産の杉を大黒柱に据えている。

またショートステイは3月中に稼働。夏からは一時保護専用施設も受け入れを始める。

3月3日には5人のこどもが入所。今後半年ほどかけて満床になる見込みだ。

全体を統括する藤堂智典施設長は「半年くらいかけてゆったりと生活を築き、こどもや職員が少しずつ慣れるようにしたい」と話す。藤堂施設長は元千葉県の児童自立支援施設の職員で、拠点の立ち上げから参画。県とのパイプも生かし、こどもの受け入れ計画も作った。

開所にあたり、児童福祉施設を担当する職員は15人配置された。4月には新たに15人が入職するという。

このほか、ガン末期などの高齢者を受け入れる看護小規模多機能型居宅介護(定員29人)やグループホームも3月中に受け入れる。就労継続支援B型事業や放課後デイサービスは1年以内に稼働する予定だ。

拠点は前例のない福祉施設を目指し、さまざまな仕掛けを施した。誰でも気軽に入れるよう塀は設けず、予約なしで使える交流スペースを完備。こどもらが自由に遊べるバスケコートも作った。

総工費は23億円

こうした複合型の拠点にした背景には経営的な理由もある。

もともと千葉県が2021年に児童養護施設の運営事業者を募集。続けて習志野市も市内初となる看多機の公募を出し、いずれも受託した。

ただこれだけでは運営コストも重いため、さらに複数事業を展開することを決めた。事務機能を集約し、職員の人材採用や育成にも活かす考えだ。

その分、総工費は23億円に膨らんだ。うち行政からの補助金は4億9000万円。残りは京葉銀行と福祉医療機構から借り入れた。

一方で開設にあたり、利用者のための基金を設立した。直接企業にメールするなどさまざまな手段で呼びかけたところ、720件・1億1000万円が集まったという。中でもIT企業のサイボウズ社はバスケコートの命名権付きで3300万円を寄付した。

飯田理事長は今後もこどもらの生活を底上げするために基金を継続し、寄付を募集する方針。「支援が必要になって初めて訪れるのではなく、日頃から住民も関わるような新たな福祉施設を目指す。地域のどんなニーズにも応えていけたら」と話している。

福祉楽団 2001年に千葉で設立。3カ所の特別養護老人ホームのほか、障害者就労支援B型事業などを行う。職員は500人。並行して、障害者らがハムなどを作る「恋する豚研究所」も運営している。

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