介護老人施設の収入構造 従来型とユニット型、定員規模別検討

2025年0228 福祉新聞編集部

第4回では、介護報酬単位の基本部分に影響を与える4項目のうち(1)介護福祉施設かユニット型介護福祉施設か(2)介護福祉施設サービスか経過的小規模介護福祉施設サービスか(3)要介護度の3項目が、基本報酬単価に影響を与えることをみてきた。このうち、要介護度については運営側で決めることはできないので、(1)介護福祉施設かユニット型介護福祉施設かによる財務状況の違い(2)介護福祉施設サービスか経過的小規模介護福祉施設サービスか、特に定員規模別による財務状況の違いをみていく。

従来型介護福祉施設かユニット型介護福祉施設か及び定員規模別の財務状況を分析した資料としては福祉医療機構(WAM)が公表している「2022年度版特別養護老人ホームの経営状況について」(以下、レポート)の分析結果の視点がたいへん示唆に富み有益である。本稿ではレポートのデータを引用し、介護報酬単位の基本部分が従来型かユニット型か及び定員規模別の財務状況にどのような影響を及ぼすか実際のデータからの洞察をみていく。

従来型かユニット型か

第4回では、介護報酬単位の基本部分がすべての介護度において従来型よりユニット型が高く設定されていることが分かったので、従来型よりユニット型の収益性が高いということが想定される。実際、レポートの分析結果によると、(1)サービス活動増減差額率の平均は従来型0・3%、ユニット型4・1%(2)赤字施設割合は従来型48・1%、ユニット34・5%と報告されている。これらから、平均論ではあるが、法人にとっての収益性はユニット型が従来型より優位である、と言える。

 

収益性の差の要因を把握するために、さらに従事者1人当たりの生産性に着目すると、従事者1人当たりのサービス活動収益は従来型とユニット型は同額であった。一方、従事者1人当たり人件費は従来型がユニット型より高い。

定員規模別の従来型とユニット型の比較

従事者1人当たりのサービス活動収益は従来型とユニット型は同額という結果は意外であるが、平均値は母集団の偏りにも影響されるので定員規模別のレポートに基づき従来型とユニット型を比較してみる。

従来型

ユニット型

 

サービス活動増減差額比率

サービス活動増減差額比率は従来型、ユニット型ともに定員規模が大きいほど高い。また全定員規模区分においてユニット型が従来型より高い、ということから介護老人福祉施設の収益性には規模の経済(スケールメリット)が働くということが言える。

従事者1人当たりのサービス活動収益

レポートによると従事者1人当たりのサービス活動収益は(1)一部(60人以上79人以下)の定員規模を除き、ユニット型が従来型より高い(2)従来型、ユニット型ともに定員規模が大きいほど高くなる、ということが分かる。全体平均では従事者1人当たりのサービス活動収益は従来型とユニット型は同額という結果であったが定員規模別に比較すると、やはり従来型よりユニット型のほうが従事者1人当たりのサービス活動収益が高い、と言えそうだ。

従事者1人当たり人件費

レポートによると従事者1人当たり人件費は(1)一部(29人以下)の定員規模を除き、従来型がユニット型より高い(2)従来型、ユニット型ともに定員規模が大きいほど高い、ということが分かる。定員規模が増すごとに従事者1人当たり人件費が高くなる点については、定員規模が大きくなるにつれ収入面での規模の経済が働きやすく、人件費に還元できる財源が生まれると捉えることもできる。

一方で、サービス活動増減差額比率が低い従来型が、ユニット型より従事者1人当たり人件費が高い、ということについてはさらに要因分析が必要だ。仮説ではあるが、年功序列型の賃金体系において、従来型とユニット型の職員平均年齢の高低が一つの要因という見方もできる。従来型とユニット型の職員平均年齢のデータが取れれば、さらに掘り下げて事象を把握できる。

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