障害の表記を変える〈コラム一草一味〉
2025年02月12日 福祉新聞編集部
草間 吉夫 新島学園短期大学 准教授
障害という表記は、時代に即しているのだろうか。障には「邪魔するや差し障り、隔てる」といった意味があり、害は「悪い影響を及ぼす物事や損なう、傷つける」という意味がある。つまり障害そのものの意味は、人間の尊厳や権利を著しく侵害する意味が色濃く残る。
2010年8月、内閣府に設置した障がい者制度改革推進会議では、障害の表記について検討を行い、同年11月に結果を公表した。結果は、表記変更には至らなかった。内容を一部引用する。「『障害』については、遅くとも江戸末期には使用された用例があり、『障碍(礙)』については、仏教語で、明治期に至るまで『しょうげ』と読まれてきた語であり、『ものごとの発生、持続にあたってさまたげになること』を意味するが、仏教語から転じて平安末期以降『悪魔、怨霊などが邪魔すること。さわり。障害』の意味で多く使われてきた。明治期に入ると、『障碍(礙)』を『しょうがい』と読む用例が現れ、『障碍(礙)』という一つの表記について、呉音で読む『しょうげ』と漢音で読む『しょうがい』という二つの読み方が併存するようになる。こうした不便な状況を解消するためということもあって、次第に『しょうげ=障碍(礙)』と『しょうがい=障害』を書き分ける例が多くなり、大正期になると、『しょうがい』の表記としては、『障碍(礙)』よりも『障害』の方が一般的になる」。
また、「戦後、『当用漢字表』(1946年)や、国語審議会による『法令用語改正例』(54年など)が、その時点における『障害』と『障碍』の使用実態に基づき、『障害』のみを採用した結果、一部で用いられていた『障碍』という表記はほとんど使われなくなっていった」。
障害者基本条約では、障害を個人と社会的障壁との相互作用である、また個人の属性として障害を捉えている。欧米では障害者を、チャンスを与えられた人「チェレンジド」や天賦の才を持つ人「ギフテッド」として表記する動きがみられる。
福祉の英訳は、特定者へ援助するウエルフェアから、すべての人の自己実現を支援するウエルビーイングに変わった。日本も表記を変える時期だ。筆者は「配慮」や「特性」を候補に挙げたい。