独居高齢者を訪問 救護施設利用者が地域交流(光明寮、大分)

2024年1206 福祉新聞編集部
独居高齢者宅で利用者(右側2人)がお茶を楽しんだ=2015年1月のふれあい訪問

大分県豊後大野市の社会福祉法人大分県光明寮(佐藤祝理事長)が運営する救護施設「光明寮」で、地域の独居高齢者宅を訪問する「ふれあい訪問」が2010年4月から行われている。

ふれあい訪問は希望する利用者2人と職員1人が付き添い、地域の独居高齢者宅を月に1回無償で訪れる。お茶と菓子を持参し、1時間ほど世間話をして過ごす。

ふれあい訪問したことがある70歳代の利用者は「施設での話や、地域の行事について話をするのが楽しい。話好きなので、気分転換になる」とうれしそうに話した。

あん摩マッサージ指圧師として働いていたことがある別の利用者が訪問した際には、肩をもむなどマッサージをサービスしたり、足腰の悪い高齢者宅の庭の雑草を取ってあげたりした。

この取り組みが始まったのは、光明寮が地域交流の一環で行っていたゲートボール大会での何気ない会話がきっかけだった。

当時施設長だった佐藤理事長は「地域で集まると、最近来なくなった人の話や訃報などの情報も入ってくる。救護施設として、独居高齢者の在宅生活の支援や健康増進を通じて、地域福祉に貢献したいという思いで始めた」と説明する。

職員のほとんどが取り組みに賛成し、光明寮がある三重町玉田地区周辺の独居高齢者のうち、これまで5軒ほどの家を訪問した。

利用者の平均年齢は72歳と高齢化が進み、在所平均期間は13・5年と長期化も進んでいる。施設が「終の棲家」になる利用者も多く、第三者との交流は貴重な体験だ。

岩﨑里恵施設長は「精神的に不安定な利用者も多いが、ふれあい訪問でのコミュニケーションは、精神的安定や生きる活力にもつながっていると実感する」と話す。民生委員にも「助かっている」と言われるという。

長年絶やさず続けてきたふれあい訪問だが、20年からのコロナ禍で休止を余儀なくされた。コロナ禍から現在までは、電話での安否確認にとどめており、再開に向けて準備を進めている。

事業休止の間、亡くなってしまった独居高齢者や利用者もおり、利用者からは「早く再開してほしい。亡くなってしまった人の思い出話がしたい」と心待ちにする声が多い。


大分県光明寮 終戦直後、収入の少ない視覚障害者のため、自身も全盲の古賀眞義氏らが資金を集め、1947年11月に大野郡盲人協会、翌12月に光明寮を設立したのが始まり。4度の移転を繰り返し、現在は豊後大野市三重町に施設を構える。地域交流を大事にし、秋祭りやゲートボール大会などで交流を深め、地域に欠かせない施設として根付いている。