若年性認知症に向き合う多摩総合支援センター 年間で100人が新規相談(東京)

2024年0926 福祉新聞編集部

社会福祉法人マザアス(髙原敏夫理事長)は2016年11月から、東京都の委託を受けて日野市で多摩若年性認知症総合支援センターを運営している。年間の新規相談は約100人、常時約200人に関わる。高齢者の認知症と違い、仕事を辞めざるを得なくなり収入が減り、発症後の活動の場がないなど、若年ならではの課題に向き合っている。

センターの職員(若年性認知症支援コーディネーター)は3人で、さまざまな相談に対応する。相談者は9割が50、60代で配偶者が多い。医療機関、地域包括支援センターなどからも連絡が入る。結果的に若年性認知症ではないケースもあるが、管理者の来島みのりさんは「じっくり話を聞いて困っていることを整理して伝える」ことを大切にする。

自宅などを訪問して本人と面談。困り事に応じて認知症専門医を教えたり、勤務先と調整したりする。自立支援医療、傷病手当など各種の社会保障があることを説明し、手続きもサポートしている。財産管理や福祉サービスの紹介もする。「情報提供だけでなく最初は窓口に同行して安心してもらう」(来島さん)。

若年性認知症の人の大半は退職を余儀なくされ、働き盛りの年齢で住宅ローンなどを抱え、経済的に困る人も多く、大きな課題となっている。センターでは希望に応じて再就職を支援。これまで17人が再就職した。うち3人は法人の福祉施設で、ほかも認知症支援に協力的な福祉施設が多い。認知機能が低下する中で再就職は難しいのが現状だ。

また、若年性認知症の人が介護保険サービスを利用しても周りは高齢者ばかりでなじめない。ほかに日中の活動の場は乏しく、閉じこもりがちになってしまう。そのため若年性認知症の支援は「制度の狭間」にあるとも言われる。

1月施行の認知症基本法では基本的施策に若年性認知症の人の雇用継続、円滑な就職が盛り込まれている。全国に約3万6000人と推定される若年性認知症の人が、希望を持って暮らせるよう支援の充実が望まれる。