官庁経験を児童養護の現場に こども家庭庁出向を終えて

2024年0418 福祉新聞編集部
霜大輝さん

児童養護施設の現場から初めてこども家庭庁に出向した霜大輝さん(37)が3月で任期を終えた。約2年にわたり改正児童福祉法の施行に向けた準備などに汗をかいた。「霞が関で培ったネットワークが大きな財産になった」と話す。

 

霜さんは大学で福祉を学んだ後、福井県の児童養護施設「一陽」に就職。中堅職員として働いていたところ、法人内で同庁が任期付きで職員を募集している話が持ち上がった。

 

霜さんはこどもが3人おり、当時家も建てたばかり。しかし「新たな国の組織を立ち上げる場を見る機会はあまりないのでは」という妻の後押しもあり、手を挙げた。

 

2022年7月からは内閣官房の設立準備室に配属。23年4月の同庁発足後は、支援局家庭福祉課で社会的養護専門官に就任した。24年4月施行の改正児童福祉法で、目玉の一つである児童自立生活援助事業のガイドラインづくりなどに関わった。

 

調査研究を基に素案を作り、研究者や関係団体などで構成する委員会で詳細を詰める日々が続いた。さまざまな問い合わせを打ち返す作業は、さながら千本ノックのようだったという。

 

その際、頭に浮かんだのは施設職員時代に関わったこどもたちだ。「何もしてやれなかったあの子らもこれからは」。思い出すたびに背筋が伸びた。

 

記者会見の内容を説明する「大臣レク」や、国会で質問する内容を事前に議員に聞きに行く「問取り」も経験。同庁職員として全国の施設関係者に講演する機会もあった。

 

「霞が関ではこれほど緻密ちみつな作業を繰り返しているのかと、驚きも多かった」と振り返る。有識者や当事者とのつながりが広がったのも大きな財産だ。

 

4月からは一陽に児童指導員として復帰した。自分も関わった制度が現場でどう生かせるのか、ワクワクする気持ちもある。

 

「これからは福井という地域のためにも汗を流したい」。法人の中核を担う人材になる覚悟はできている。