介護スタッフの3割が外国人 厨房やドライバーでも採用(大阪)
2024年04月07日 福祉新聞編集部特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどを運営する大阪狭山市の社会福祉法人ラポール会が、コロナ禍前から始めていた介護スタッフの外国人採用を急増させている。現在、約320人の介護スタッフのうち約90人はミャンマーを中心とした外国人。待遇は日本人と同じで、ほとんどの外国人が夜勤などの勤務をこなす一方で、研修などの充実もあって離職率は日本人の半分の10%未満となっている。日本人スタッフの採用が難しくなる中、同会では厨房や送迎スタッフにも外国人を採用し始めている。
ラポール会が外国人採用に踏み切ったのは、2016年。「チャレンジ」(辻光一朗・法人本部長)として始め、19年には介護福祉専門学校に通うネパール人2人とベトナム人1人、技能実習生のフィリピン人4人を採用し、介護老人福祉施設くみのき苑ゆらら(堺市)で勤務。ネパール人のクマル・ビマルさん(28)は仕事内容だけでなく日本語も上達して、1人で夜勤をこなすほどの戦力になっている。
フィリピン人4人は帰国したが、辻本部長が「とても痛かった」と話すほどの戦力になっていた。このため、「外国人のスタッフがいれば、介護の質が上がる」と判断。日本人スタッフの採用が比較的楽だったコロナ禍においても外国人の採用に力を入れ、ミャンマーに直接出向いて採用するまでになった。
外国人採用を強化する一方で、日本語教師やミャンマー人の通訳者を雇い、研修事業者と連携して初任者研修や実務者研修、介護福祉士の国家試験合格を目指した講座なども行い、長期勤務を促した。
このため、外国人スタッフの仕事と日本語の能力は着実に向上していく。施設の利用者とのコミュニケーションも円滑になり、多くの外国人に夜勤などの勤務も任せている。22年12月に母国の女性と結婚したクマルさんは新しく採用した日本人の教育係を担うほど成長しており、「あと4年はここで働き、日本の永住ビザ取得を目指したい」と話している。
ラポール会の外国人採用は、開始から約5年のため3年以上の勤続は12%にとどまるが、面接時に同会の質問に「5年以上働きたい」と答えた人が20人中19人に上るなど、長期勤続意欲は高い。
1月には、介護特定技能労働者として実務経験3年を超えた4人が介護福祉士試験の筆記試験を受験。合格すれば、5年で帰国を迫られる特定技能1号ビザから介護ビザに切り替わり、5年を超える長期勤務が可能となる。
今回は残念ながら4人とも不合格だったが、受験チャンスは来年にもう1回ある。4人のうち1人は合格ラインまで3点だっただけに、来年合格の期待が高まっている。
辻本部長は「外国人の採用には、日本語教師や通訳を必要とするだけでなく、住まいの確保も必要で、コストが掛かる。ただ、日本を目指す外国人には優秀な人が多い一方で、日本人の採用は困難」と話し、厨房や送迎バスのスタッフでも外国人の採用を始めている。
技能実習生として働くミャンマー人のモー・モー・サンさん(27)は、母国の病院で介護スタッフとして勤務した後で来日した。「日本は給料が高い上にきれいだし、技術力も高い。日本語も上達してきたし、ここでずっと働きたい」と話していた。
外国人介護人材の採用 経済連携協定(EPA)の締結で、2008年から一部の国から採用可能になり、17年に本格化。技能実習生が介護施設で働けるようになり、19年からは特定技能制度を利用した外国人を採用できるようになった。ただ、介護福祉士の国家試験に合格しないと5年で帰国を迫られる。留学ビザで来日し、介護福祉士養成施設を出れば、現時点では「みなし介護福祉士」として介護ビザが取得でき、国家試験に合格しなくても5年間勤務で正規の介護福祉士となる。