広島・生口島に複合型福祉施設 障害者の就労支援と宿泊施設が一体化

2024年0328 福祉新聞編集部
ボナプール楽生苑の外観

広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「しまなみ海道」の真ん中に位置する生口島(尾道市)で介護事業などを展開する社会福祉法人新生福祉会(山中康平理事長)は3月、地域課題の解決に向けた複合型福祉施設「ボナプール楽生苑」をオープンさせた。

 

かんきつ類の搾汁さくじゅうなどを担う就労継続支援B型事業所と宿泊施設が一体化し、地域交流スペースも備える全国でも珍しい福祉施設で、こうした施設を整備した背景には生口島特有の課題があった。

 

温暖な気候からかんきつ類の栽培が盛んで、レモンは全国トップクラスの生産量を誇るにもかかわらず、島内にこれまでかんきつ類の搾汁加工所がなかった。また、多くの観光客やサイクリストが島を訪れるも、宿泊施設不足が常態化。福祉分野では、島内に障害者の就労支援の場が少ない状況が続いていた。

 

こうした地域課題の解決を図る新施設の構想を練った新生福祉会は、日本財団の助成プログラム「第1回みらいの福祉施設建築プロジェクト」に応募し、採択された。

 

3億円の助成を受け、島北部に2階建て、延床面積約960平方メートルの新施設を建設。整備費総額は約5億7000万円。2階は宿泊施設で全13部屋。清掃は障害者が担う。1階はかんきつ類の搾汁加工所や、島の特産品を販売するアンテナショップ、ホテルのタオル、シーツ類の洗濯スペースなど障害者の就労支援の場になるほか、誰でも立ち寄れる交流スペースも備える。

 

施設で働く職員は新規雇用し、10人が働く。就労支援事業の利用者は生口島と隣接する因島出身の3人で、4月からは5人増え計8人になる予定だ。

 

これまではフェリーで往復3時間かけて広島県竹原市の就労支援事業所に通っていた利用者もおり、本人と保護者も喜んでいるという。距離が近くなったため、平日ほぼ毎日通うことを希望する利用者もいる。

 

オープンして間もないが、島内の農家から搾汁の依頼が相次いで寄せられ、宿泊施設の利用状況も好調だ。就労支援の利用者を定員の20人まで増やし、1人当たりの平均月額工賃4万5000円を目指している。

 

乃美祐太施設長は「宿泊施設や就労支援は順調だが、地域住民の利用が少ない点が課題だ。気軽に立ち寄れってもらうための方策を模索したい」と話している。