デジタルアートを販売 障害者が「NFTプロジェクト」(奈良)

2024年0321 福祉新聞編集部
SNSによる広報やウェブサイトの運営に関わる利用者(手前)。森下静香さん(奥)は「デジタルでの発信やコミュニケーションには、大きな可能性がある」という(Good Job!センター香芝)

アートとデジタルの力で、障害のある人と共に新しい仕事と文化をつくろう。奈良市の社会福祉法人わたぼうしの会(播磨靖夫理事長)は、日本総合研究所(東京都品川区)と共同で、昨春、偽造できないデジタルアート「NFTアート」=メモ=を活用したプロジェクトをスタート。2月6日から、障害のある利用者らの表現を生かしたNFTアートの販売を始めた。購入者だけでなく、誰もが参加できるデジタルコミュニティーを運営。デジタル社会を通してさまざまな人たちが福祉に参画する、先進的な取り組みになりそうだ。

 

プロジェクトの名称は、「Good Job! Digital Factory」。第1弾となる作品は、NFTアートコレクション「グッドジョブさん」。福祉の分野に新しい仕事をつくる人や、その活動を応援する人をイメージしたキャラクターをデザインした。

 

わたぼうしの会が運営する就労支援施設GoodJob!センター香芝(奈良県香芝市)が、NFTサービスの開発会社の協力を得て、1000種類を制作、販売する。

 

Good Job!センター香芝は、1日当たり平均30人が通う就労継続支援A型、B型と生活介護の事業所だ。2016年の開所以来、「アート×デザイン」をテーマに、クリエーターや企業、自治体などと協働しながら、障害のある人の豊かな表現を生かしたものづくりと販売を行い、多様な仕事を生み出してきた。

 

3Dプリンターなどのデジタル工作機器も活用。VR(仮想現実)やAI(人工知能)など最新のテクノロジーを用いた表現とケアを考える、実験的なプロジェクトも行っている。

 

「グッドジョブさん」は、同事業所の利用者やボランティア20人が、顔や手のパーツを紙面に描き、外部デザイナーがパソコンで図案化。同事業所と、たんぽぽの家アートセンターHANA(奈良市)を利用する障害のあるアーティスト10人が、服の図柄となる作品を提供した。

 

決済時に各パーツがコンピューターによってランダムに組み合わされ、唯一無二の作品が完成する仕組み。価格は暗号資産の「Ether(イーサ)」で計算され、1作品0・01ETH(約5800円、3月10日時点)。社会福祉法人が暗号資産を活用するのは先進的だ。

 

NFTアートは販売したら終わりではなく、チャットツールを使ってデジタルコミュニティーをつくることに意味がある。「デジタル上に、より開かれたもう一つの『Good Job! センター』ができるようなイメージでしょうか」と、センター長の森下静香さん。

 

販売から1カ月余で、約230人がコミュニティーに参加し、購入した「グッドジョブさん」を見せ合ったり、参加者のアイデアから新しい商品が生まれたり、活発なコミュニケーションが始まっている。

 

NFTアートの購入者は、プロフィール画像として利用できるのはもちろん、障害のある人や福祉施設と一緒にものづくりやイベントに参画できる。

 

森下さんは「これまで福祉に興味のなかった人たちが関心を持ってくれて、現場に足を運んでくれるきっかけをつくりたい。他の社会福祉法人とも連携することで、多様な可能性が広がると考えている」と話した。

 

収益は、運営に必要な経費を除いて、プロジェクトのさまざまな仕事に関わる障害のある人たちに還元される。

 

【メモ】 NFTアート=NFTは、Non-Fungible Token(非代替性トークン)の頭文字。所有証明書を付けて偽造を阻止、資産価値を担保する技術。デジタルアートやゲームのアイテムなど、さまざまなものがNFT化されている。