[新機軸]業務革新でケアの質向上を 介護職員の働き方改善に注力(静岡)

2024年0125 福祉新聞編集部
「5年間いるつもりです」と昨年入職したプープイントゥさん(26)。タブレットで介護記録を入力する=特養「みくらの里」で昨年12月25日

業務革新でケアの質の向上を――。静岡県下田市の社会福祉法人梓友会は介護スタッフの働き方改善に力を入れている。仕事の負担を軽減する介護ロボットなど5種類の機器を導入しているほか、医療・看護の夜間オンコールも活用。川島優幸理事長(68)は「職員が長く働けて、利用者に喜んでもらえるサービスを展開していきたい」と意欲的だ。

 

業務改善事業の取り組みは政府の働き方改革に関連し、5年ほど前から全国の社会福祉法人でさまざま行われている。静岡県では昨年度、梓友会のほか、いずれも浜松市にある八生会(大場清弘理事長)と七恵会(増田公基理事長)の3社会福祉法人でスタート。介護職と介護サポーターとの間の日常業務の役割整理や作業手順の改善などについて調査・分析し、「職員の不安感の軽減や生まれた余裕時間で利用者と向き合う時間が増えた」(県のホームページ)という。

 

効率化が迫られる事情の一つは人材難。伊豆半島先端にあって県内では少子高齢化のテンポが特に速い賀茂地域(下田市、西伊豆町など1市5町)は、若い介護スタッフの確保が容易でない。このため梓友会は2019年に技能実習生を3人採用したのをはじめ、23年からは特定技能実習生も入職。今、ミャンマー国籍の9人が介護職として働いており、夏までに12人に増やす計画だ。

 

並行して進めてきたのが、労働の負担を軽くする介護記録システムやセンサー付きベッド、見守りカメラ、眠りスキャンなどICT(情報通信技術)化と、腰痛予防の移乗ロボット、接客でも使われるヒト型ロボット(Pepper)などの導入。3年前には看み取とりに関連し、医療・看護の夜間オンコールサービスの利用を始めた。「コスト(月14万円)は掛かるが、嘱託医も『仕事が楽になるなら』と賛成してくれた」(川島理事長)。

 

外国人実習生はみなN4以上の日本語能力を持ち、パソコンも使う。現在、5年間の就労が義務付けられているが、一定の技能と日本語の能力があれば同一分野なら最短1年で転籍できるよう24年以降、制度が変わる。法人の経営姿勢が問われることになる。

 

川島理事長は「単に安心、安全に勤務できる職場というだけではなく、例えば口腔ケアやリハビリなど、きちんとしたエビデンス(科学的根拠)に基づく利用者ケアを前提に、職員の負担軽減も求められているのが今の姿ではないか」と気を引き締めている。

 

梓友会 「地元に介護施設を」の声を受け、九州大医学部を卒業した熊本県出身の内科医、永田雅夫・初代理事長(元伊豆下田病院長)が1988年に社会福祉法人を設立。翌年、賀茂地域で最初の特養「梓あずさの里」を立ち上げた。名称はこの地方に多く自生する梓(弓の材料に使われた落葉高木)にちなむ。東京都杉並区の住民を受け入れるため2018年オープンした全国初の自治体間連携特養「エクレシア南伊豆」(南伊豆町、全個室ユニット型)など6介護施設と1保育所を運営する。職員約340人。