来春、「里親支援センター」創設 乳児院などに新たな道

2023年1115 福祉新聞編集部

虐待などによって社会的養護の必要なこどもが増える中、改正児童福祉法の施行で、来春から児童福祉施設「里親支援センター」(仮称)が創設される。こども家庭庁は、来年度の概算要求に、第二種社会福祉事業となる「里親支援センター」の設置に関わる予算を盛り込み、10月28、29日に神戸市で開かれた全国里親大会で改めて概要を説明した。児童福祉を担う社会福祉法人が里親支援にどう動くのか、熱い年の瀬になる。

 

こども家庭庁支援局家庭福祉課の鈴木茂課長補佐は「家庭養育優先」をうたってきた一連の政策を踏まえて「行政説明」を行った。

 

来年度の概算要求で、「里親支援センター」の人材育成などに約7400万円の予算を盛り込み、フォスタリング事業(里親養育包括支援)の担い手の掘り起こしなどを進めるとした。

選任4人を配置

現在の里親支援は、全国に308カ所あるフォスタリング機関が中心だ。乳児院や児童養護施設などが、都道府県などからの委託を受けて行っている。

 

行政説明によると、「里親支援センター」は、里親、里子▽ファミリーホームの従事者、そこで養育されるこども▽里親になろうとする人――を対象に相談や援助をしていく。

 

具体的には▽制度普及促進と里親を募るリクルート活動▽里親への研修▽里親の選定・委託▽里親家庭への訪問等支援▽委託児童の自立支援――の五つを挙げた。

 

登録里親家庭60世帯以下を基準に里親支援センター長、里親等支援員、里親研修等担当者(トレーナー)、里親リクルーターの4人を専任で配置する。20世帯増えるごとに、里親等支援員1人を新たに配置。児童福祉施設として位置付けられるため、第三者による評価を受ける。

運営主体はどこか

第二種社会福祉事業なので参入は自由だが、現実的には、現在のフォスタリング機関を担う308カ所の乳児院、児童養護施設、NPOなどが運営主体の候補に挙げられる。全国に設置されている約170カ所の「児童家庭支援センター」(児家セン)も、児童養護施設などが運営している所が多く、参入の候補だ。

 

大会では、児童福祉施設が持つ「生活支援機能」や児童相談所職員・施設の里親支援専門相談員のアセスメント・コーディネイト力に期待する声が出た。

母子施設活用にも期待

注目されるのは、母子生活支援施設の活用に光が当たったことだ。山縣文治・関西大教授は基調講演で「私見」とした上で「親子分離にならない、母子生活支援施設の活用によって、里子になる事案を減らせる」と話した。

 

また、児家センを委託運営する施設についても講演後、「『児家センを持つ施設』ではなく、『施設を持つ児家セン』という立場で、母子施設と共に時代をリードしてほしい」と話した。

 

加藤鮎子・こども政策担当大臣は「年末にまとまる『こども大綱』とその具体策を網羅する『こどもまんなか実行計画』(仮称)で、施策の一層の具体化に取り組む」とメッセージを寄せた。

 

部屋の確保など「児童福祉施設」としての体制整備も必要になる。自治体がどう予算をつけるのか、関係する社会福祉がどう動くのか。「こどもまんなか社会」の近未来が動き始める。

 


 

里親支援センター創設の背景には、低い里親等受託率や、対応の難しいこどもの急増がある。2021年度末、家庭での養育が困難で、里親やファミリーホーム、乳児院、児童養護施設で養育されているこどもは約3万3000人。このうち、里親やファミリーホームでの養育が占める割合は23・5%(7798人)。国の目標値(乳幼児75%、学童期以降50%)に遠く及ばない。一方、22年度、全国の児童相談所に寄せられた虐待相談対応件数は、過去最多の約22万件。里子の約40%に被虐待経験があった。