社会福祉法人が独自に介護技術を認定 手当に連動、職員意欲が向上(兵庫)

2023年1101 福祉新聞編集部
利用者と談笑するケアマイスターの山口暁子さん(左)

兵庫県尼崎市の社会福祉法人あかね(松本真希子理事長)は独自に職員の介護技術を認定する「ケアマイスター制度」、接遇スキルを認定する「サービスマイスター制度」を実施している。レベルに応じた手当を付け、給与体系も年功序列を廃止して本人次第で上がるよう改定したことにより、キャリアアップが明確になった。法人内の介護技術の均一化や法人理念の浸透にも効果を上げている。

 

ケアマイスターは2008年に始めた。介護技術は高いが管理職に向かない場合は評価が低くなりがちな状況を改め、介護技術を適切に評価しようと取り組んだ。他産業からの転職者を含めて自分の現状が分かり、上を目指せるピラミッド式とした。

 

レベルは5段階=図。パートを含めて下位2レベルの受験は必須とし、転職者が介護福祉士でも最下位から受験する。試験は年1回。筆記(60~90分)と実技(8~15分)を行う。問題は独自に作成し、介護福祉士国家試験などの受験対策にもなる。上位レベルほど合格率は低く、現在20人しかいないマイスターの一人、福田望さんは「試験日は職員が1年で最も緊張するとき」と言う。

 

マイスター制度

 

開始から15年。試験を通じて、経験に頼りがちでバラバラだった介護技術が均一化されて高水準を確保でき、法人理念の出題もすることで職員に浸透させている。上位3レベル以上には認定カードが交付されるため、利用者、家族、職員が相談する相手を判断するのに役立っている。

 

一方、サービスマイスターはあいさつ、表情、振る舞い、敬語、電話応対などの接遇スキルを高めるため、12年に始めた。全職員を対象に5レベルで評価する。上位レベルはクレームやイレギュラーな出来事への対応力も問われる。

明瞭な給与体系

給与体系はこれまで年功序列で学歴によって違い、高卒入職で仕事ができても、後から入職した大卒新人より低くなっていたことから、資格を取得し努力すれば給与が上がるシステムとした。

 

ケア、サービスマイスターともレベルに応じて月1000円から2万円の手当を付け、ほかに資格手当、勤続年数手当、夜勤手当、役職手当などを足していくとおおよその給与額が分かる。職員にとって給与を上げるには何をすべきかが明確になった。

 

本人評価と上司数人の評価で決めていた賞与も、大半は自分が思っていたより上司の評価が低くモチベーションが下がってしまっていたため、現在はサブリーダーから統括部長まで12の職責に応じた金額を設定するなどしている。退職金制度も新たに法人運営への貢献度などを加算し、最大3000万円超の支給もあり得る。

 

松本理事長は「長く勤務すれば給与が上がるわけではない。経験に頼らず、誰にでもチャンスがあるので自分でつかんでほしい」と話す。

現場の力量向上

法人では、理念を理解して稼働率などを意識した現場運営ができ、イレギュラーなことにも対応して介護全般の知識がある人材の育成を目指しており、そのための手段がケア、サービスマイスターだ。

 

ここ数年は利用者家族の相談や調整が増えており、松本理事長は「職員が説明力や解決力をつけて自信をもって対応できるようにしないといけない」と言う。

 

社会福祉法人あかね=1995年設立。兵庫県内3エリアで、特別養護老人ホーム4カ所、デイサービス9カ所、サービス付き高齢者向け住宅7カ所など計43事業を行う。職員数は1002人でパートが4分の3を占める。事業規模は56億円。