「意欲のある外国人材に来てほしい」晋栄福祉会(大阪・門真市)
2023年10月18日 福祉新聞編集部介護の職場で年々増える外国人職員。〝コロナ鎖国〟により昨春まで2年ほど入国制限が続いた。「意欲のある優秀な外国人介護人材にもっと来てほしい」。いまなお受け入れ要望の強い第一線の苦労について、大阪府門真市にある社会福祉法人晋栄福祉会(濵田和則理事長)の特別養護老人ホーム「ナーシングホーム智鳥」(大北淳施設長、定員80人)で、法人組織「グローバル戦略推進委員会」の森本誠委員長(神戸垂水ちどり施設長代理)らに聞いた。(3人のコメントより一問一答を構成)
――外国人介護スタッフの数は。
法人全体で164人(男性29人、女性135人)、介護職の13%ほど。大阪府下では上位でしょう。同性介護から女性を中心に採用が多い。日本がEPA(2国間経済連携)協定を結んでいるフィリピン、インドネシア、ベトナム3カ国で約150人を占め、あとはネパール、タイ、中国、ミャンマー、ブータン。滞日最長はインドネシア人女性の12年で、日本を含め9カ国の「多文化共生」職場です。
――コロナ入国待機者は何人いたか。
新施設オープンのためフィリピンから22人(特定技能)来るはずが、止まってしまった。現地の研修所へ集まってもらい、3カ月ごとに日本とインターネット交信し、つなぎとめを図った。2022年3月に日本側の入国制限は緩和されたが、相手国側で渡航制限が続き、つらかった。外国人職員が友人を紹介してくれ助かったこともある。
――日本人職員に異文化への違和感はないのか。
各国の文化や習慣、信仰などについて研修するので大丈夫。イスラム教徒は原則1日5回祈りをささげるが、プレイルーム(お祈りできる場所)を用意してある。モスクへ金曜礼拝に行く職員には、その日を明け番にするなどシフトを組む。クリスチャンの日曜礼拝の場合も同じです。
調整に悩むのは休暇。一時帰国したい人もいる。1~2週間、場合によっては1カ月取り、日本人にうらやましがられたこともある。遠いので、そのくらいないと継続勤務が難しい人もいる。
――コロナの第4波流行(21年3~7月)は関西発だった。
第5波(8月)までクラスターはなかった。第6波(22年2月)のオミクロン株から発生。「ナーシングホーム智鳥」でも今年2月にユニット型(全室個室)へ建て替える前の従来型施設(4人部屋)時は1人感染すると部屋ごと全滅だったりした。なかなか入院できず施設療養。外国人職員も日本人とほぼ同じ割合で感染しましたね。
アパートは〝職員寮〟として法人名義で契約し、ゴミの出し方を教え、近所あいさつにも同行する。イスラム教の女性のヒジャブ(頭や体を覆う布)姿に驚く人もいますから。
――今後について。
現在、EPA受け入れ組の12人が介護福祉士試験に合格、その候補生(3年間の実務経験を待って受験)も42人いる。継続的な学びを提供し、昇格システムをつくり、できるだけ長く勤務できるようにしたい。
ベトナムで看護師資格を取り、EPAで来日6年のグエン・ティ・トウエット・チンさん(30) 「介護福祉士、日本語検定(N2)ともパスし、在留資格を介護ビザに切り替えた。あと10年くらい勤めたい。日本は税金や年金、健康保険料が高く、こどもが小さいうちはいいが、ベトナムは学校の授業料が安く、戻った方がよいかなと迷っています」
晋栄福祉会=1979年、保育所から出発し大阪、兵庫、奈良の3府県で介護部門18、保育部門27の施設を運営、職員総数約1800人。地域の認知症利用者支援に力を注ぐ。