全国老人福祉施設協議会が財政審建議などに反論 「事実誤認の推論で遺憾」

2023年0815 福祉新聞編集部

全国老人福祉施設協議会(大山知子会長)は7月26日、財政制度等審議会の建議(5月29日)と財務省の2023年度予算執行調査(6月30日)における社会福祉法人に関する指摘に対し、「前提とする事実の認定を誤り合理的な推論とは言えない。国民に誤解を与えるもので遺憾と言わざると得ない」とし、エビデンスをもとに反論した。

 

建議では「主に介護事業を運営する社会福祉法人は平均して費用の6カ月分前後の現預金、積立金などを保有し、その額も増加している」としているが、老施協は、社会福祉法人は社会福祉法に基づいて事業継続に必要な財産として年間支出の3カ月分、将来の運転資金、事業用不動産の保有が認められているため、「6カ月分前後は決して高い水準ではない」と主張した。

 

また、建議の「現預金、積立金など」の定義には「負債が考慮されていない」と指摘。さらに現預金、積立金が増加したのは、コロナで福祉医療機構(WAM)などから受けた融資をコロナの完全収束まで手元に置いているためであり、加えて建築費高騰で延期せざるを得なくなった施設整備の積立金も含まれているとした。

 

実際、WAMのコロナ融資は20~22年度の3年間で3552億円(1事業所当たり3364万円)に上り、その金額が勘定される「長期運営資金借入金」は21年度が平均2613万円でコロナ前(19年度は平均1209万円)の2倍以上増えている。

 

一方、予算執行調査が「現預金、積立金などが積み上がっているにもかかわらず、職員の給与に還元されていない可能性がある」と、あたかも余裕財産が増えているのに給与に反映させていないかのような記述に対し、老施協は「現預金、積立金はいずれ返済や建築費などに充てるもので、増額したことのみをもって余裕があるという認識、給与への還元が不十分という指摘は根拠が不十分」と指摘。同じ社会福祉法人の20年度と21年度を比べると職員1人当たり活動収益以上に給与は増えているデータを示し、反論した。

 

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