けん玉で交流しよう 精神障害者作業所が駄菓子屋(相模原市)

2023年1111 福祉新聞編集部
皿回しをしながら、けん玉の技を披露する山田さん(左端)

けん玉で遊べる駄菓子屋「もしかめや」が10月28日、JR淵野辺駅北口(相模原市)にオープンした。運営するのは精神障害者が通う地域活動支援センター第3けやき。駄菓子を並べて売る利用者は「精神障害者」ではなく「けん玉のおじさん、おばさん」として地元のこどもたちと交流を始めた。

 

仕掛け人は施設長の山田龍さん(54)。前職で引きこもりや不登校のこどもと接した時、けん玉を披露すると、閉ざされていたこどもの心が開いた。難しい話は後にして、まずはけん玉をやってみようよ――。そんな姿勢が有効だと気付くことが積み重なった。

 

40代後半になって本格的に練習すると瞬く間に上達し、けん玉検定で最上級群の「マスター」に。検定を運営するグローバルけん玉ネットワークの「けん玉先生」に登録し、保育所などに出向いて技を披露してきた。

NHK紅白に出場 ギネス記録を更新

転機は2019年のNHK紅白歌合戦だ。演歌歌手の三山ひろしさんの後ろに並んで技を見せる集団「けん玉ヒーローズ」の一員として出場。連続出場4年目の22年は山田さんを含む127人が成功し、ギネスブックの記録を更新した。

 

その熱気が第3けやきの利用者や他の職員に伝播でんぱするのに時間はかからなかった。

 

「けん玉を練習する人が周囲で急増した」と山田さん。それならばいっそのこと、本業の合間にけん玉を教えにあちこち出向くのではなく、第3けやきをけん玉ができる交流拠点にしようという構想が固まった。

こんな場がほしかった

JR淵野辺駅の駅前という立地の良さもあり、オープン初日は150人超が来店した。こどもの居場所づくりをする人らも立ち寄り、「こんな場所がほしかった」との声も上がった。

 

第3けやきに半年以上来なかった利用者がこの日、久しぶりに顔を出したことも「うれしい驚き」と山田さん。けん玉に治療効果はないが、けん玉が生み出す雰囲気が利用者の心身に良い影響を与えることを多くの人に知ってほしいと願っている。

 

第3けやきは1996年に同市内で開所した作業所で、今年8月末、淵野辺駅前に移転した。「もしかめや」の営業は月~金と毎月第4土曜日の午後1時~5時。