強制なくし全人ケアへ WHO精神保健改革責任者のファンク氏来日

2023年1029 福祉新聞編集部
ゆりあすで炭坑節を踊るファンク氏(左から2人目)

WHO(世界保健機関)の精神保健福祉改革の責任者、ミシェル・ファンク氏がこのほど、日本弁護士連合会の招へいにより来日し、各地で講演した。ファンク氏は、今後の精神保健福祉は強制的な隔離をやめ、人権に基づく全人的なケアであるべきだと提唱。また、日本の実情を知ろうと社会福祉法人SKYかわさき(三橋良子理事長、川崎市)の地域生活支援センターゆりあすを訪ねた。

川崎で当事者と交流

ゆりあすは精神障害者が職員として働く「ピアサポート」を重視。ファンク氏は10月21日、退院支援や外出支援といったピアサポート活動の説明を受け、ピアスタッフや利用者とカラオケを楽しんだ。

 

また、同法人のグループホーム移転(2014年)をめぐる住民の反対運動を収めた記録映画「不安の正体」を鑑賞。ファンク氏は「この映画を観たことは私が仕事をする上でとても重要だ。今日見せていただいた皆さんの活動が他の国でも実現できるよう支援していきたい」と語った。

2030年までに改革

WHOは30年までに各国が到達すべき精神保健福祉の目標と、その実現に向けた行動計画を定めている。オーストラリア出身のファンク氏は各国向けの手引きや好事例集を作り、それらを普及する役割を担う。

 

手引きは治療にとらわれて患者を拘束・隔離するのではなく、教育や就労など患者の生活全般に目配りしたケアに転じるため、必要な法律のひな形を盛り込みながら改革の手順を解説している。

 

日弁連はこの手引きなどから学び、国内の改革に生かそうと17日から東京、仙台、札幌、大阪でファンク氏の講演を柱とした集会を開催。企画した池原毅和弁護士(東京)は「医療と人権が対立するのではなく、同じ方向に歩いていけるようWHOの提言を参考にしたい」としている。