年金改革法案、被用者保険の適用拡大 2カ月遅れの閣議決定
2025年05月24日 福祉新聞編集部
政府は5月16日、パートなどの短時間労働者が厚生年金に加入する年収要件(106万円以上)を撤廃することを柱とした年金制度改革法案を閣議決定した。従業員数を51人以上とする企業規模の要件もなくし、被用者保険の適用対象者を広げる。法案は3月上旬に閣議決定する予定だったが、将来の基礎年金を底上げする改正事項に与党内の慎重論が広がり、削除した。2カ月遅れの国会提出となり、会期末までに成立するかは不透明だ。
改正の狙いは働き方や男女の差に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化に沿った制度にすることだ。
被用者保険の適用拡大により、短時間労働者も将来の年金の増額が期待できる。在職老齢年金については、年金が減額となる収入基準額を上げる。年金の減額を気にして働き控えする人を減らす。
遺族厚生年金は、18歳未満のこどものいない夫婦が60歳未満で死別した場合、年金の給付期間を男女とも原則5年とする。現行制度は男性よりも女性の給付期間が長い。女性の就業率が高まり、共働きが増える実態に即して男女差を解消する。
このほか、厚生年金加入者のうち収入の高い人(賞与込みで月額65万円以上)については、今よりも高い保険料の負担を求めつつ将来の給付額を増やす。
障害年金は特例延長
障害年金をめぐっては、厚生労働省の審議会で20年ぶりに議論されたが、抜本的な改正には至らなかった。
会社勤めをしている時に発病し、退職して国民年金に移った後に初診日がある場合、受給額は相対的に低い国民年金になる現行制度は不合理だとする立場から、「初診日要件」の見直しが議論となったが見送られた。
そんな中でも改正事項に入ったのは、障害年金を受給できるよう保険料未納者を救済する特例の10年延長だ。
特例は保険料を長期間納めていなくても、初診日のある月の前々月までの1年間に未納がなければ納付要件を満たすとする救済措置で、「直近1年要件」と呼ばれる。2026年3月31日までの時限措置となっていた。
不支給増の疑念広がる

全国「精神病」者集団を含む4団体が会見を開いた
障害年金をめぐっては、不支給となった人が24年度に急増したとする4月末の共同通信の報道を受け、恣意的に不支給が誘導されたのではという疑念が広がっている。
19日には厚労省内で精神障害関係4団体が会見を開き、本来支給されるはずなのに不支給となった人の救済につながる調査を日本年金機構にするよう厚労省に申し入れたことを報告した。
その上で、障害年金の認定基準が診断名に依拠している点がそもそもの問題だと主張。精神障害者の生活実態に合った、社会モデルによる認定基準に改めるよう国会議員に働き掛けていくとした。