高額療養費、論点と実例を提示 厚労省専門委員会
2025年11月10日 福祉新聞編集部
医療費の患者負担を抑える「高額療養費制度」に関連し、厚生労働省は10月22日、見直しの論点を同日の専門委員会(座長=田辺国昭東京大大学院教授)に示した。
自己負担の上限を引き上げる場合でも、負担増となる人への影響を考慮することを論点の一つとした。その上で負担能力に応じた負担を求める観点から、所得区分をきめ細かく設定することの是非を論点とした。
そうした観点から、同日は高額療養費制度で自己負担を軽減できた実例を複数示した。
年収約410万円の40代男性の胃がん患者の例では、年間の総医療費約300万円に対し、自己負担は3割で約89万円。高額療養費で約53万円圧縮した結果、自己負担は36万円になったという。
また、この男性とほぼ同じ年収の人の支出を総務省の家計調査から抽出。年収の約半分が食費、光熱水費、住居費、税・社会保険料に充当され、医療費は「その他」から支出する構図を示した。
専門委員会では、同制度の在り方だけでなく、提供される医療の費用対効果、低所得者の負担軽減策など、医療保険制度全体に関わる議論が必要だとする見方が支配的だ。そのため、同制度の検討結果を単体で導くのではなく、社会保障審議会医療保険部会が年末までにまとめる医療保険制度改革の報告書に内包する形で方向性を出す可能性が出てきた。
同制度は、患者の自己負担額が高くなった場合、年収に応じた上限額を超えた分を保険で払い戻す仕組み。当初の見直し案は今年8月から上限額を引き上げるものだったが、政府は患者団体の反発を受けて3月に全面凍結すると決めた。
5月から再び同専門委員会で見直しの議論を始め、今秋までに検討結果をまとめるとしていた。

