被虐待者64%が二次被害 支援現場の研修義務化提言〈民間団体調査〉

2025年1105 福祉新聞編集部
ACEサバイバー支援を求めて集会が開かれた(右から丘咲代表理事、三谷准教授)

こども期に虐待やネグレクト、家庭問題によりストレスやトラウマの体験がある「ACEサバイバー」に対する支援制度の実現を目指す集会が10月27日、参議院議員会館で開かれた。主催した一般社団法人Onara(丘咲つぐみ代表理事)はACEサバイバーの64%が成人後に支援を求めた時に再び傷ついている(二次被害)との調査結果を踏まえ、各支援分野におけるトラウマインフォームドケア研修の義務化を提言した。

ACEはAdverse Childhood Experiences(小児期逆境体験)の略語で、米国を中心に研究や対策が進んでおり、親の虐待やネグレクト、家族の精神疾患や自殺、薬物乱用といったACEが多いほど、健康面や社会経済的問題のリスクが高いことが明らかになっている。日本でも京都大が2021年に2万人の回答を集計した調査で、38%がACEサバイバーであり、社会的に孤立し、自殺念慮(死にたい気持ち)が高いことなども分かった。

説明した三谷はるよ大阪大大学院准教授は、日本に推計で440万人のACEサバイバーがいるとし、「家庭環境によっていろいろなことが左右されている。自己責任や努力不足で片付けられない問題だ」と支援の必要性を強調した。

同法人の調査は8~9月に行われ、ACEサバイバー851人が回答。二次被害を受けた場は医療や福祉、行政機関などの割合が多かった。相談内容の軽視や否定、責任転嫁などがあり、69%が生活や回復に深刻な影響を受け、46%が原体験と同等以上の苦痛を感じていた。自身も親から虐待を受けた丘咲代表理事は「トラウマへの理解不足が原因で起きている。研修の導入は支援する側、される側の安全を守る鍵になる」としている。

同日はACEサバイバー6人らも発言。50代男性は「生きているのは運のおかげという話はACEサバイバー同士で当たり前に聞かれるが、運頼みではなく、制度の力で救われてほしい」と話した。

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