社会福祉法人やNPOも身寄りない高齢者も支援 厚労省、日常生活自立支援事業拡充へ

2025年0916 福祉新聞編集部

厚生労働省は8日、社会保障審議会福祉部会(部会長=菊池馨実早稲田大理事)を開き、日常生活自立支援事業(日自事業)拡充への方向性を示した。身寄りのない高齢者を支援対象に規定し、支援内容については死後事務などを定めた。さらに実施主体は従来の都道府県社会福祉協議会などに加え、社会福祉法人やNPO法人など民間にも広げる。会合で福祉団体からは前向きな声が相次いだ。

身寄りない人も追加

現在の日自事業は、認知症高齢者や精神障害者、知的障害者など判断能力が不十分な人を対象に、地域で自立できるよう福祉サービスの利用を援助するもの。具体的には福祉制度を利用する際に必要な手続きや、日用品の支払いといった金銭管理、預貯金の通帳などの預かりなどを実施。定期的な見守りもしている。

実施主体は都道府県や指定都市の社協が担っており、実際には市町村社協に委託して窓口業務や支援を行うケースが多い。

利用者は近年5万6000人ほどで横ばいとなっている。ただ、2040年の1人暮らし高齢者は約900万人と推計され、今後身寄りがなく生活上の支援ニーズを持つ高齢者は増大する見込みだ。

会合で厚労省は、新事業を第二種社会福祉事業として法律に位置付け、制度を拡充する方針を示した。新たに身寄りのない高齢者を規定し、判断能力がある人も支援対象とする。また、支援内容に入院や福祉施設の入所の手続き、死後事務を位置付け、いずれかを行うよう提案。利用料は原則自己負担とし、要件を満たせば減免もある。

実施主体については制限しない方針を示した。「市町村社協や社会福祉法人、NPO法人、一般社団法人などを想定している」(厚労省成年後見制度利用促進室)という。

新事業は都道府県への届け出制とし、都道府県知事は必要に応じて経営状況を調査する。違反した場合は事業停止や罰則を課す。

福祉法人は前向き

会合で全国社会福祉法人経営者協議会の谷村誠副会長は新事業について「前向きにやりたいが、後で利益相反を指摘される可能性もある」と述べ、今後課題を整理する考えを示した。

全国老人福祉施設協議会の石踊紳一郎副会長も地域貢献の一環としてやるべきだと強調。ただ、利用料金が高額にならないよう上限を決めるよう求めた。

一方、東京都社協の鳥田浩平副会長は「新事業は高度な知識や専門性が求められ、現行とは支援の対象や内容が異なる」と話し、関東の社協から不安の声が出ていると指摘。方向性に一定の理解を示しつつも、新たな枠組みを検討することを提案した。


日常生活自立支援事業 判断能力が不十分な人に福祉サービスの利用を援助するもので、1999年に地域福祉権利擁護事業として開始した。利用者の内訳は認知症高齢者53%▽知的障害者12%▽精神障害者29%。利用者の預貯金は50万円未満が41%で、なしが25%。月平均利用は約2回。1回当たり利用料は平均1200円。

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