生活保護減額は違法 厚労相「対応審議する場を設ける」

2025年0705 福祉新聞編集部
勝訴したことをアピールする原告や弁護団=6月27日、最高裁前で

2013~15年に生活保護費を引き下げたのは違法だとして、受給者が国と自治体に減額処分の取り消しなどを求めた2件の訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は6月27日、違法と認め処分を取り消す統一判断を示した。物価下落を反映する「デフレ調整」について「裁量の範囲の逸脱、乱用があった」と断じた。福岡資麿厚生労働大臣は1日、「判決を踏まえた対応を審議する場を早期に設ける」と表明した。

最高裁が生活保護の基準引き下げを違法と判断したのは初めてで、生活保護行政の歴史に刻まれる判決となった。国の賠償責任は否定した。低所得世帯との格差を是正する措置(ゆがみ調整)については適法だとした。

同日の判決は大阪、愛知の2件の訴訟に対するもの。同種訴訟は29都道府県で31件起こされ、地裁、高裁の判決は割れていた。継続中の同種訴訟も今後、最高裁判断に沿った結論になるとみられる。

厚労省は13~15年、食費など日常生活のための「生活扶助」の基準を平均6・5%引き下げ、約670億円を削減した。最高裁は物価下落のみを指標として引き下げた点や、専門家の審議を経なかった点を問題視した。

追加支給の規模は

敗訴が確定したことを受け、今後の焦点は厚労省が原告側の主張にどのように対応するかに移る。原告側が求めることの第1は全受給者への謝罪だ。引き下げ当時の受給者は約200万人。各地の訴訟で原告となったのは最大で1027人、そのうち232人がすでに亡くなっている。

第2は減額分を追加で支給することだ。原告以外も含めた受給者全員を対象にすれば、必要額は数千億円規模に上るとみられ、この点は厚労省が新たに設ける審議の場の主な論点になる。

生活保護の基準は「就学援助」など他の低所得対策とも連動しているため、どの制度にどの程度影響が及んだか把握するには相当な時間がかかる。

再発防止へ立法も

第3は同様の事案が生じないよう再発防止を図ることだ。

原告側は基準引き下げに至る経過を解明する検証委員会を設けること、今後の基準改定における審議会の運営を適正化すること、権利性の明確な「生活保障法」を制定することを求めている。

1日の会見で検証の必要性を問われた福岡大臣は「当時の経緯の検証というよりも、今回の判決を踏まえた対応を急いで検討したいが、指摘の点も踏まえて適切に対応したい」と答えた。

厚労省が新たに設ける審議の場は生活保護に精通した専門家を委員とするもの。事前に知らされていない原告側は2日、福岡大臣に対し撤回を求める抗議声明を発表した。