保育施設が産後ケアハウス 育児相談や憩いの場に〈奈良・大淀町〉
2025年05月27日 福祉新聞編集部
奈良県大淀町の幼保連携型認定こども園「花吉野えんめい保育園」(外村かよ園長、社会福祉法人延明福祉会)が運営する産後ケアハウスが今年度、同町の産後ケア事業に承認された。同事業の実施場所は病院や助産所が大半で、保育施設運営のケアハウスは珍しく県内では初となる。
園によると、町内で出産できる病院や助産所はなく、近隣市町村に産後ケアを受けられる施設もないという。産後ケアを望む母子は遠方の施設に通わざるを得ない状況だった。大淀町はマタニティークリニックに産後ケア事業(ショートステイ、デイサービス型)を委託するが、場所は車で30~40分の和歌山県橋本市となっている。
こうした状況を踏まえ、保育施設を運営する社会福祉法人として取り組めることはないか、同園の性教育親子講演会で講師を務める助産師も交えて2023年度に方策を模索。翌24年度に同園から徒歩5分にある一軒家を借りて産後ケアハウス「maman(ママン)」を開設した。
6月から独自の産後ケア事業に取り組みながら、緊急時に協力してもらえる医療機関の選定や、感染症、危機管理マニュアルを策定するなど母子の安全確保体制も構築。こうした実績が評価され、今年4月に同町の産後ケア事業(デイサービス型)の委託先として承認された。
委託後も産後ケアの実施体制に大きな変更はなく、非常勤の助産師や同園の常勤看護師、保育士らが対応。母子1組当たり月6時間が上限で、町民の利用料は従来よりも3500円安い1500円。町外在住者は6時間当たり5000円。
吉野町や五條市など近隣自治体からの利用が多く、大半は午前10時から6時間利用する。健康、産後うつチェックを受けた後、赤ちゃんの沐浴を職員に任せて一人での入浴、育児相談、オイルトリートメント(有料オプション)でリフレッシュしたりして過ごすことができる。
保育施設が運営する強みを生かし、同園の栄養士による栄養バランスの取れた昼食、おやつを提供するほか、未就学児の兄弟がいる場合は同園での一時預かりも可能だ。
産後ケア事業のリーダー役を担う同園看護師の田中一惠さんは「継続利用につながるよう、居心地がよいと感じてもらえる環境づくりを進める。将来的には近隣の市町村からも産後ケア事業の委託を受けたい」と意気込んでいる。
産後ケア事業 出産後1年以内の母子に対し、心身のケアや育児のサポートを行う。母子保健法に位置付けられ、市町村の努力義務。2023年度で1547自治体が取り組む。実施方法は、病院、助産所などに短期間入所する「ショートステイ型」▽施設に通う「デイサービス型」▽居宅訪問する「アウトリーチ型」の3類型。国の23年度調査によると、ショートステイ、デイサービス型の実施場所は病院、診療所、助産所で約9割を占める。