幸(さき)くてませよ〈一草一味〉
2025年01月20日 福祉新聞編集部潮谷義子 社会福祉法人慈愛園 相談役
新年にあたり、本来であれば「おめでとうございます」と書き出さなければならないのだろう。
しかし、地震・水害に見舞われた能登地方の復興状況、日ごとに報道される世界の紛争地域、国内の通り魔のような突然の殺人事件の現況は、私たちの心、精神力のバランスさえ奪い取っていく。正月の慣用句だと思えばよいのだが、今は使いたくない。
それでも私はこの正月の寄稿に「希望」を込めて書きたい。去る12月14日、私の母校、日本社会事業大同窓会は「社会福祉セミナーin九州」を佐賀県立神埼清明高で実施した。直接に会場に参加するのは、同校の福祉系の学生、ほかはリモート参加。年齢も職種も経験も多種多様で、講師を引き受けた私はどこを対象に何を話せばよいのか皆目わからず、レジュメ作りも困難だった。
このような時、福祉新聞に「高校生が施設運営」という大きな見出しが記載されていた。神埼清明高も参加した企画の記事だ。高校生たちの学びの裏付けとして、掲示板にはボランティア活動、実習報告、介護福祉士国家試験100%合格、進学合格率100%。志望校は同志社、立命館、佐大、北九州市立大や久留米大など。残念なことに日本社会事業大の名前はなかった。就職決定100%、うち県内が94%。
当日は天山おろしの寒風が校舎に吹きおろし、やせっぽの私の骨まで冷やしたが、座談会で交流した高校生の質問・会話は温かな福祉マインドにあふれていた。私は「大学も職場もあなた方を待っているよ」と伝えた。
この企画のために同窓会事務局はもちろん、会長、支部長はきめ細かく役割分担を担いセミナー成功を導いた。
ふと、神埼町で育った次郎物語の著者、下村湖人先生、私の人生の師、湖人先生の世話で大分県庁に就職した吉田嗣義氏のことが偲ばれた。吉田氏の好きな言葉に良寛が貞心尼に贈った言葉「幸(さき)くてませよ」を新年のあいさつとしたい。