〈厚労省幹部に聞く〉現場が賃上げに知恵を 伊原和人事務次官

2024年0905 福祉新聞編集部

――医政局長や保険局長などを経て、事務方トップとなりました。

就任にあたり全職員向けに発信したメールで、二つのことを伝えました。

一つは霞が関の仕事はチームでやるものだということです。皆でやれば気持ちも高まり、乗り越えられる。周りに助けを求めることも大切です。

もう一つはチャレンジすること。私が入省以来、ずっと厚生労働省は高齢化への対処を考えてきました。しかし、令和時代は人口減による担い手不足という新たな問題に直面します。もはや前例は当てにならない。新しい発想と知恵が必要で、そういう政策立案を応援したいと思っています。

――6月に政府は骨太方針24を策定しました。全世代型社会保障の構築に向けた方向性をどう考えていますか。

全世代型社会保障という言葉は、安倍政権から継承されています。すべての世代が受益する社会保障は、すべての世代が参加し負担する政策へという流れです。枠組みは随分進みましたが、引き続きさまざまな項目が盛り込まれました。

実際には、歳出改革努力を継続した上で、日本経済が新たなステージに入りつつある中、物価動向などに配慮しながら各年度の予算編成過程において検討すると書いてあります。まさに物価と国民の賃金も上がり始めた。

公定価格で売り上げが決まる介護報酬の改定率は、今年度、この10年で1番高い改定率となりました。この状況に配慮し、現場が賃上げすることは知恵を出すべき難しいテーマです。

また、介護分野には人手不足の中でどう現場を回すかという問題もある。これらの具体化が年末に向けた大きな課題です。

――骨太は、2026年度から始まる子ども・子育て支援金についても触れています。

最終的に28年度までに医療保険ルートで1兆円の負担を国民にお願いすることになります。その際、政府は医療や介護の歳出改革などにより、実質的な負担は生じないとしています。

まだ時間はありますが、計画的にどんな改革をすれば宿題に応えられるか。与党とも相談しながら、改革工程表の項目だけに縛られず、それ以外も排除せずに考えていきたいと思っています。


いはら・かずひと=1964年生まれ。香川県出身。東京大卒。87年入省。