〈厚労省幹部に聞く〉困窮者に居住支援 日原知己社会・援護局長

2024年0816 福祉新聞編集部

――就任の抱負は。

人口減少や家族、地域のつながりが薄れるなど大きな変化の中で課題も複雑化しています。社会・援護局には、制度や分野にとらわれない視点から検討を重ね、新しい施策を形にしてきた積み重ねがあり、そうした強みを生かしながら、新たな課題に取り組んでいきたいと思っています。

――目下の政策課題は。

前回の社会福祉法改正付則に基づく5年後見直しの議論を始めています。地域共生社会づくりをさらにどう進めるかとともに、身寄りのない高齢者らが抱える課題への対応、成年後見制度の見直し議論の中で、司法と福祉の連携をどのように強めていくかなども検討していきたいと考えています。

先の国会で生活困窮者自立支援法等の改正が成立しました。住まいに関する支援など、来年4月の施行に向けしっかり取り組んでいきたい。厚労省も一部共管となった改正住宅セーフティネット法についても、関係機関と連携して施行に向け準備していきます。

――被保護世帯数が増加傾向にあります。

多様化、複雑化する課題に対応した自立支援が求められると考えています。今回の法改正では、生活困窮者自立支援制度と生活保護の連携の強化や、関係機関の間で情報交換や支援の検討を進めやすくするための改正も行っています。

――救護施設など生活保護法に基づく施設についてはどうでしょう。

他制度の施設の利用が難しい人などを支えるセーフティーネットとして尽力いただいています。今年度からは、地域での就労に向けた支援を行う場合の加算や、これまでの実践を地域の被保護者への支援にも生かしていただけるよう、通所事業を実施しやすくするための見直しを行いました。ぜひ活用していただきたいと思います。

――慢性的な人材不足が続いています。

介護人材確保のため、処遇や職場環境改善、外国人介護人材の受け入れ環境の整備などを進めています。より多くの多様な人材に活躍してもらえるよう、介護の職場で働く人の意向やキャリアパスについての考え方に応じたきめ細かな対応が重要と考えています。

――民生委員についてはどう考えますか。

現在あるさまざまな制度や事業が整備される以前から、住民の立場に立って住民の相談に応じるなど地域福祉の現場を支えていただいてきました。今後もこの歴史ある制度をしっかりと引き継いでいくために、担い手不足や業務負担の軽減にどのように対応するか、大変大切な課題だと考えています。


ひはら・ともみ=1967年生まれ。東京都出身。東京大卒。89年入省。