障害者総合支援法など一括改正法が成立 居住、就労を多様化
2022年12月19日 福祉新聞編集部障害者総合支援法など8法の一括改正法が12月10日、参議院本会議で与党などの賛成多数で可決された。障害者の住まいや働き方の幅を広げることが柱。精神保健福祉法の改正事項も含め、都道府県・市町村の力量に委ねるものが多く、改正事項が適切に運用されるか不安視する声が相次いだ。8日の参院厚生労働委員会では35項目の付帯決議が付いた。施行は一部を除き2024年4月1日。
改正法案は障害者総合支援法、障害者雇用促進法、精神保健福祉法などを束ねた。総合支援法は障害者のグループホーム(GH)の定義を変える。
入居者のうち希望する人がアパートなどでの暮らしに移れるよう支援すること、移行後の定着を支えることを支援内容に追加する。
就労については、働き方の選択を支える新サービス「就労選択支援」を創設する。短時間(週10~20時間未満)なら働ける精神障害者らを雇う企業のメリットになるよう、障害者雇用促進法に特例を設けて雇用率への算定を認める。
これらは障害者が福祉サービスの枠にとどまらないよう、住まいや働き方の多様化を進めると評価できる半面、福祉からの離脱促進ともとれる。
「過度な誘導」を懸念
改正事項は24年度の障害報酬改定などに委ねる部分が多く、現時点では詳細が不明であるため、政府に対する注文が相次いだ。
GHについては衆参いずれの付帯決議も「1人暮らしへの過度な誘導につながらないように」とくぎを刺し、就労選択支援については参院の付帯決議が、「一般就労への過度な誘導による福祉サービスの利用抑制につながらないよう留意すること」とした。
医療保護に議論集中
精神保健福祉法をめぐっては、強制入院の一つ、医療保護入院に議論が集中。患者の家族が同意・不同意の意思表示をしない場合、市町村長が同意できるようにする改正について「医療保護入院の拡大につながるのではないか」と指摘された。
精神保健福祉法のそれ以外の改正事項も都都道府県・市町村の責務を重くし、その運用に委ねるものが多い。
しかし、その責務を果たせるよう自治体の人的・財政的な基盤が強化されるか不透明なことから、理念と運用の乖離を懸念する声が続出。衆参の付帯決議は同法関係で8項目も盛り込んだ。