社会的養護サイト「Iris」開設 交流会で当事者らが発表
2022年02月22日 福祉新聞編集部児童養護施設などで育った若者が集う「社会的養護経験者全国交流会」が11日から3日間にわたって開かれ、オンラインを含めて100人以上が参加した。当事者支援団体などによる同実行委員会の主催。交流会の最終日には社会的養護経験者にさまざまな情報を届けるウェブサイト「Iris(アイリス)」が発表された。
厚労省も後方支援
交流会は2017年、当事者活動団体「CVV」(Children’s Views & Voices)の中村みどり副代表らが、社会的養護の経験者や支援団体などが意見交換を行う機会をつくろうと立ち上げた。20年度からは厚生労働省が「社会的養護出身者ネットワーク形成事業」として予算化している。
今回発表した社会的養護経験者向け情報サイト「アイリス」はこれまでの交流会で「施設退所後に制度を知らずに孤立した」といった声を受け、実行委が中心に立ち上げた。サイト名はギリシャ語の虹の意味から採ったという。
サイトでは、トップページにある悩みの種類のコンテンツから地域などを選択することで、簡単に相談機関を見つけることができる。相談機関のページには、メールや電話といった相談方法や、相談時間、写真などが掲載されている。
悩み別の公的制度も紹介している。例えば、お金については、福祉事務所や社会福祉協議会、法テラスなどを紹介。心の悩みでは、精神保健福祉センター、妊娠・出産については母子生活支援施設や子育て世代包括支援センターなどを列挙する。
一方、サイトの最大の特徴は、当事者の声を紹介するページがあることだ。喜びや怒り、悲しみなどの感情や、児童養護施設や障害児入所施設、里親といった種別ごとに意見を紹介している。
中村副代表は「必要な情報を見やすいようシンプルに整理したサイト。今後もアップデートするので、定期的に見てもらえれば」と話している。
交流会も盛況
3日目の報告会では、玉井秀紀・厚労省子ども家庭局家庭福祉課長補佐が「皆の声を聞かせていただき、今後の施策をよりよいものにできれば」とあいさつ。同様に長田浩志・内閣官房内閣審議官も「さまざまな課題もあるが、行政が努力することが大事」と決意を語った。
権利擁護がテーマの分科会では「日常の中で相談できる環境が重要」などの指摘があったと報告。また結婚がテーマの分科会では、「理想の家族像があるからこそ、ちょっとしたずれでダメージを受ける」「健全な家族を前提とした社会システムに疑問と諦めの感情が入り混じっている」などの本音が出た。
このほか施設について話した分科会では「自立後に鍵を閉めるのをつい忘れてしまう」などの意見があり、盛り上がったという。
■Iris